週4時間減りましたと報告したのに、役員が動かなかった話
こんにちは。速水拓真です。
前回は、後輩のリストに、先週私が電話した会社が未着手で出てきた話を書きました。今回の話は、少し台帳の外に出ます。AIに任せた仕事の結果を、部の外で、予算を握る人に届ける仕事の話です。春の会議で届けられなかった日のことから入ります。
春の会議で、工数の3行だけを持っていった
AIの道具を整え始めてから半年がたった春、私は部の四半期の報告会に1枚の表を持っていきました。表は好調そのものでした。企業調査が1社30分から3分になった。リスト作りが週4時間から1時間になった。減った時間は合計で、1人あたり週4時間です。
目的がもう1つありました。似た事務の重い同僚たちに、この回し方を広めたい。そのためにAI契約を6人分に広げる予算のお願いも、この会議で一緒にする予定でした。
役員の返事は、短かったです。「減った話は聞きました。それに対していま、いくらかかっていますか。そして、いくら戻ってきて、いつまでに戻りますか。それと、やめたら何が残りますか」。1つも、用意していませんでした。会議の席では「工数は、ここの3行目に」と指差しただけでした。指差す先の数字は正しかったけれど、その数字が答えている質問は、会議が聞いていない質問でした。時間は返していましたが、円には直していなかったのです。
会議は10分で終わり、「数字が整ったらまた」という言葉だけが残りました。
良い途中経過は、判断の材料ではない
会議のあと、表を見直して気づいたのは、私が持っていた数字が営業の中の言葉だけで書かれていたことです。20年前、私の報告は話数で行われていました。今週30件回りました、アポ3件入りました。上司はそれで部内を回していて、それで良かった。営業1人の仕事は、その言葉で回る世界でした。
でも予算を出す人は、別の言葉で話します。書いて持っていった3行は、どれも良い途中経過でした。判断の材料には、1行もなっていなかった。役員が動く数字は結局3つで、いくらかかるか、いくら戻るか、やめたら何が残るか、でした。減った時間の話は、この3つのどれにも入っていなかったのです。
時間を円に直すのは、乱暴ではありませんでした
最初、私は腰が引けていました。営業の時間に金額を付けるのは乱暴な気がしたからです。向きが逆でした。営業の人件費は毎月、実際に出ていく費用です。そこから削れた時間は、費用が削れているそのものです。換算は盛りでもなく、役員の言葉への翻訳でした。
翻訳を組み立てたとき、私は数字を切り下げました。時間単価の概算は、末尾を下げてから使うことにしたのです。理由は単純で、盛られた数字を持っていった人の話は、一度でも疑われたとき、正しい部分まで全部疑われるからです。その代わり、以後の試算は必ず不利なほうの数字で組みます。受注率は前期実績の平均ではなく、いちばん低い月を使いました。出てくる数字は小さくなります。それでも、数字を疑う人の目が疑いから確認に変わるのが、夏の会議で手に取って分かるほど違いました。
実測と試算を、先に1文で切り分けた
いちばん疑われるのは、「時間が浮いたから売上が増える」の飛躍です。この飛躍は、相手に見つけてもらうのではなく、自分から切り分けました。数字の前に1文だけ置きます。工数の削減は実測です。売上への貢献は試算です。
1文を置いただけで、その後の数字の受け止め方が変わりました。
もう1つ、自分で決めた線があります。売上の試算を1人分で止めることです。6人に掛けたい気持ちはあるのですが、大きい数字を書いた瞬間、聞き手の関心は効果の検証から作り話の検証に移ります。部全体の主張は、工数の削減が実測の換算だけで回ります。それで十分でした。
そして弱点も、先に自分から言うことにしました。浮いた時間が報告書の清書に向かったら、円に直した数字は紙の上のままです。この上限は、商談数の実測で補い続けるしかない。先に言っておけば、指摘は弱点ではなく確認に替わります。
夏の会議は、3分で終わった
夏、同じ予算のお願いをもう1度持ち込みました。今度の1枚は、3行ではなく3組の数字でした。かかるのは6人分で月2万4千円、初期の投資は社内の既存契約と手作りの仕組みで追加なし。戻る側は、削れた工数の換算が先で、売上は1人分の試算まで。やめたときは、契約を止めても作った手順と集計は社内のアカウントの中に残ります。
説明は3分で終わり、質問は2つでした。1つは実測の数字の取り方、もう1つは広げる人数を段階にするかどうか。答えはどちらも、その1枚の中に書いてありました。承認はその場で出て、秋から部の6人で回ります。
会議を出た廊下で思ったのは、春の表と夏の1枚で、部の中の動きは何も変わっていなかったという事実です。変わったのは、春の数字が営業の中の言葉だったのが、夏には会社の言葉に翻訳されていたことだけです。
今週に入って毎朝6時のリストが回り始めた後輩には、こう伝えました。来年春には、自分の数字を上に出す番が来る。そのとき使う言葉は3つで、それ以外の行は全部、手元に置いていくだけでいい。後輩のリストはこの秋が初めての実測になります。
任せる線
数字の並べ替え、時間の換算、4週間のログから実測の行を切り出す作業は、AIと時計に渡りました。渡さないのは、実測と試算を切り分けるあの1文、試算をどこで止めるかの決断、やめたときに何が残るかの説明です。最後の1つは、この仕組みが私の設計で、私の名前で動いている話をしなければならないからです。数字の翻訳の責任には、AIに署名が付けません。
今週、ひとつだけ試すなら
手元の「減った時間」を、1行だけ金額に直してください。単価は思いついた数字の下に切り、減った時間の行の直前で、実測と見積もりのどちらかを1文で書き分けてから、部の外の人に見せるつもりで読み返す。春の私のように良い話だけを持っていくと、良い途中経過のまま会議から流されます。
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