速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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同じ会社に、9日おいて2通送ってしまった話

初出: note

こんにちは。速水拓真です。


前回は、商談が始まる前の練習の話でした。今回はもっと手前の、リストの話です。このnoteでは、集めて絞って並べ替えて、という話は書いてきました。ただ、そのあいだにある「集めた行をまとめて社数を確定させる」話は、ずっと飛ばしてきました。飛ばしていたことには理由があって、9月にそのつけが自分に返りました。20年、リストの社数を信じすぎていた話です。


行数550は、社数550ではなかった


8月末の話です。工業会の会員名簿240社と、展示会の出展者一覧310社を、1つの表に並べました。行数は550。並べ終わった瞬間が、この週でいちばん気持ちのよい時間でした。集めた、という事実が、数字として手元にある。


この気持ちよさに、私は20年何度も乗せられてきました。そのまま週間のアプローチ計画を立てて、週15社を配りました。9月9日、会員名簿の行から「(株)〇〇電機」へ1通を送りました。そして9月18日、出展者一覧の行から「〇〇電機株式会社」へ1通を送りました。表記が違うので、別々の行として並んでいました。9日おいて出した2通目です。


返事が届いたのは2通目から先でした。そこにはこうありました。「先日のご連絡の内容と同じようですので、まとめて社内で確認させていただきます」。まとめて。私の出した2通は、同じ会社に2通でした。9日おいて、名前のかたちだけ変えて、同じ会社へ。


重複いくつ?に答えられなかった


この夜、同僚にこの話をしました。返ってきたのは1行。「お前の表、行数550って社数550と同じにしてないか。重複はいくつなんだ」。


答えられませんでした。集計の欄に「重複」の行を書いていなかった。書いていなかったというより、そこに書く数字を数える習慣がありませんでした。行数を数えて、社数を数えたと勘違いする。この勘違いで週間の計画を立てて、上司に社数を報告する。同じ会社に2通が飛んでいく計画を、550社へのアプローチとして報告していたことになります。


翌朝、Excelの重複の削除を会社名列にかけて、完全一致の重複88社を出しました。ここで重複88、と書いて終えるのは簡単です。ただ、この88は全部ではありませんでした。完全一致は、重複の一部だけを見つける道具だからです。


文字が違うだけで、41組の候補が出た


残りの行のなかに、文字が違うだけで同じ会社が潜んでいました。出てきたのは5つの型です。株式会社が前につくか後ろにつくかの前後株。ホールディングスがHDになっている略称。半角と全角の英字。名前だけ似ている別会社、〇〇電機と〇〇電機製作所。そして支社のまま載っている行。


この5型で41組の候補が出ました。全部で74,400通りの比較を人間の目でするのは、1組5秒でも103時間です。やりませんよね。逆に「〇〇電機を含む」という含む検索で引くと、今度は〇〇電機製作所まで吸い込んで、別の会社を消す事故になる。完全一致は機械に任せられる。表記ゆれは、人間には量的に無理で、関数には質的に無理。この隙間をAIに渡しました。


仕事は付箋です。「この2行、同じ会社の可能性があります」と、確信度の高・中・低つきで候補を付けてもらう。そして「迷ったら低に置く。迷いを隠さない」という指示を最初に入れました。押印するのは私です。41組を検証すると、34組が同一法人、7組が別法人でした。7組の内訳は、親子の関係が6組、名前が同じで県が違うものが1組。親子は統合しません。親会社をたたくか事業会社をたたくかは営業の判断であって、名寄せの段階で決めてよいことではないからです。そのまま両方残して、メモ欄に「〇〇HDの子会社」と書きました。


数字を立て直すとこうなります。本当の重複は122社。新規は188社。プールの社数は428です。完全一致だけで終えていたら、34社ぶんの重複行が残り、社数は462ということになっていました。週間計画の下に書いていた社数は、この462でした。


消さないで、退避する


統合のときに決めたことが2つあります。1つは、窓口に載っていた表記と出典を消さない。社名をそろえるのは、新しく作った代表表記の列でよく、元の行は証拠として残します。2つの窓口に載っていたという事実は、出典をつなげて残します。もう1つは、統合された行を削除しない。重複タブに切り取って移すだけにしました。行を消すと、消えた理由を人は覚えていられません。あの会社、どこへ行った、となったとき、重複タブにはいます。


この退避をしたまま表を見ていたら、気持ちのよい気づきがありました。重複タブに移った122社は、消した122社ではなかったんです。重複というのは、2つの窓口の両方に載っていた会社です。会費を払っている会社が、出展にも名前を載せている。業界に顔を、2つ出している会社です。だから窓口数の列を1つ足すと、名寄せが終わった瞬間に、先に声をかけるべき会社の順番が手に入ります。2つの窓口に載っている会社から声をかける。


9月18日に返事が返ってきたあの会社も、実は2つの窓口に載っていた会社でした。事故で2通出していたときは、この列はありませんでした。私は気づかないうちに、先に声をかけるべき会社に2回声をかけることになっていた。重複という数字は、社数の減り方の数字ではありません。窓口が何個あるか、という信頼の数え方です。


社数を減らすはずが、順番が手に入った話


名寄せは「社数を減らす作業」と思っていました。減っていたのは行の重複ぶんで、会社は1社も減っていません。重複が見つかれば見つかるほど、先に声をかける順番の材料は増えます。重複が多いと社数が減るから凹む、と感じていたのは、重複と社数を取り違えていたからです。


集計の欄はこうなりました。取込310、重複122、新規188。「重複いくつ?」には答えられる数字が欄に書いてあり、週間計画も報告も、その数字の上に立つようになりました。行数550が社数428になった週のほうが、550のままの週より、信頼できる数字でした。


任せる線


表記の違う2行を比べて、候補に付箋を付け、確信度を申告するのはAIです。完全一致の重複も機械に任せます。でも、押印をする、親子を統合しないと決める、元の表記と出典を消さないと決める、そして窓口数をアプローチの順番に使うかどうかを決めるのは、人間です。34と7の境に立つのは、いつも人間でした。


今週、ひとつだけ試すなら


集めた表の集計欄に、重複の行を書けるようにしてください。完全一致だけでも構いません。重複の削除を会社名列にかけて、数字を1つ、書き込みます。行数と社数が等しい表には、水増しが入っている可能性があります。社数を本物にする手間は、アプローチの順番という材料に、そのまま手に入ります。


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