後輩のリストに、先週電話した会社が未着手で出てきた話
こんにちは。速水拓真です。
前回は、いちばん重い箱から手をつけて、AIを2か月開けなかった失敗の話を書きました。今回は現場側に戻って、リストの話です。毎朝6時のリストが2人分に増えたとき、20年前に私が言われ続けた言葉が、もう一度言われそうになりました。それを、電話の前の5秒で止めた話です。
今朝、後輩が1枚の表を持ってきた
今朝、デスクのそばに後輩が来て、1枚の表を指さしました。「この会社、先週の20社にもいました。それで、僕のリストでは未着手になっています。このまま電話しようとしていたんですけれど、いいですか」。
あと数十秒で、その電話が切れていました。先方にしてみれば、1週間をあけずに、別の顔から同じ話を聞かされる。うちの物差しは先週、4列の定義書に整えて、金曜に絞った20社がアプローチの枠を回っています。この会社は火曜に私が電話して、返事待ちの行です。後輩の毎朝6時のリストは火曜に登録した自分の台帳に届いていて、そちらには私の電話の記録が、どこにもありません。
後輩が手を止めて聞きに来たのは、立派な習慣のおかげではなく、後輩が自分の判断を口に出す人なだけです。その一声がなければ、20年前の事故が、AI付きでもう一回起きていました。
20年前、「先週も御社の方から」と言われた朝
20年前、展示会で名刺を交換した企業に、翌週電話をかけました。切り出しの話は整えていて、数字も用意していました。受話器の先の担当者は静かにこう言いました。「先週も御社の方から、同じ資料をいただきました」。5日前に、部の別のメンバーが同じ提案書を送っていたのです。
返事は、その後一度も来ませんでした。こちらの提案が悪かったわけでも、価格が外れていたわけでもありません。先方の中で、私たちは「自社の誰が何をしているか分かっていない会社」に変わった。商品の欠陥なら直せますが、印象の欠陥は直りません。この事故のあと、部内では注意会を開きました。名刺を持ち帰ったら必ず共有、という合言葉まで作りました。
合言葉は3週間で破れました。忙しくなるからです。注意で直ったものは、忙しさの中で元に戻ります。直り続けたのは、あとになって用意した、1枚の台帳と、たった1つの動作でした。
直り続けたのは、切ったあとに開く1行
いまの台帳は1枚です。列は7つ。企業名、URL、状況、最終更新日、次の1文、担当、備考。状況は6語に絞っていて、未着手、着手中、商談中、保留、見送り、失注。断られた行が「未着手」のまま行に居座る病気は、この「終わり」の定義で消えます。決着して負けた行は、台帳から出して顧客管理に移す。
核は、列でも状況でもありません。電話を切ってから、台帳を開くまでを1セットにすることです。ここが回ると、台帳は「いま、どの会社を誰がどこまでやっているか」を全員に隠さずに見せる唯一の事実になります。ここが回らないと、列を増やすほど、台帳は古い看板になります。
うちの台帳は今朝52行でした。うち12行は、昨日の夜に古いファイルから引っ越しさせた行です。かつて手で集めていた「購入リスト」や「展示会」の表が、フォルダの中で半年から1年、開かれずに眠っていました。眠っている行を300行の山のなかから目で数えるのは無理でしたが、最終更新日と状況が行に入っていれば、AIは1分で拾います。抜き出す条件はただ1つ、最終更新日がしきい値を超えている行だけです。
生むのが速くなったぶん、増えるのが速くなった
名寄せを書いた回は「どこの会社か、わからなくなる」話でした。今回は「もう触ったかどうか、わからなくなる」話です。根っこは同じで、リストが1本ではなく複数に分かれていることです。
むしろAIの世代は、増え方が強くなりました。昔は年に1枚のExcelでしたが、いまは人1枚の毎朝6時です。私の時計が回り、後輩の時計が回る。物差しが共有されているからこそ、両方から同じ会社が浮かぶ。出てくる会社が重なるのは、物差しが上手くいっている証拠です。その重なりが着手の記録とつながらなければ、上手くいった証拠がそのまま事故の元になります。
後輩の台帳を責めたくありません。届いた表を手近な場所に貼る。台帳が増えるのは、悪意の向きではなく便利さの向きです。だから直すのは注意ではなく、「うちは台帳が1本です」と言い切って、共有フォルダのその1枚に、2人分の着手を書くことしかない。ほかのメンバーが開けない場所にある台帳は、台帳ではなく隠しリストです。隠しリストは、二重着手の在庫です。
それ以来、後輩の朝の10分には1歩が足りました。表を開くまえに、台帳を社名の一部で検索して、状況と担当者を5秒眺める。「着手中・担当者=Bさん」が出たら、そのまま進まなくていい。今切り出そうとしている人に、一声かける。30秒です。毎回のこの5秒と、週1回の全体の掃除が2段構えで回れば、あの事故は構造的に起きなくなる。
眠っている行は、捨てた行ではなく半調理済み
引っ越しさせた12行の中身は、保留の6行と見送りの6行でした。読み返してみて、どれも「捨てた行」ではありません。断られたのに、断られた記録が行に残らずに古くなる。あるいは、断られたことは記録したのに、もう誰もその行を開かない。眠りには3種類の落とし方があります。誰にも手を付けずに眠る熟睡、断られて忘れられた冷凍、商談中のまま途絶えた音信不通。落とし方で戻し方の一手が変わるので、行に入っている日付と状況だけが手がかりになります。
そして、眠っていた行の正体は、捨てられた行ではなく、半調理済みの行です。新しい50社を掘って当たる1時間と、眠っていた5社を起こして当たる1時間。私の経験では後者です。かつて手を付けた会社は、社名の読み方が合っていて、電話がつながっていて、備考に「経理が窓口・決算期に興味」のような接点が残っています。
いままでは、この復活を「忘れていた行を、ふと思い出す」ことに頼っていました。思い出すべき行を、忙しい月は思い出さない。昨年も1社、「値段さえ合えば」という行のまま、値段の話をしたこと自体を半年後に忘れていました。
ですから、今日の金曜の整備15分のあとに、10分を足しました。除外欄を整える整備は、まだ集めるべきでない物の間を守る整備です。今日から足す10分は、眠っている行を起こす整備。眠りの日数が長い順に抜き出させて、上の5社を来週の最初の枠に入れる。試しに1社目だけ置いてみました。去年の冬に「年度が変わったら」と保留にした行で、その年度はもう半年過ぎています。
任せる線
集めること、決まった時刻に押すこと、眠っている行を経過日数で拾うことは、時計とAIに渡りました。切ったあとに台帳を開くこと、電話やメールのまえの5秒、起こす5社を最終的に決めること、断りを記録するときの1文を残すことは、人間のまま残っています。20年前の事故は、人の注意で直りませんでした。直ったのは、1枚の台帳と、着手した瞬間に開く1行と、電話のまえの5秒です。この3つは、どれも忙しさの向かう先にある動作ではありません。
今週、ひとつだけ試すなら
手持ちのリストを1枚開いて、1分だけ健康診断をしてください。「誰が・いつ・何をしたか」が行ごとに書いてある行を数えます。2割に満たなければ、そのリストには、いつか二重着手の在庫が積まれています。まず企業名、状況、最終更新日の3列で、1枚に集めてください。電話やメールのまえに、社名で検索して5秒眺める。台帳がある人なら、金曜の夕方10分で、最終更新日がしきい値を超えた未着手と見送りの行を抜き出させて、上の5社を来週の最初の枠に置いてください。
「先週も御社の方から、同じ資料をいただきました」という言葉は、20年に1度の事故ではなく、着手を1行記録しないまま過ごした朝が続けば、必ず出る言葉です。切ったあとの1行と、かけるまえの5秒。ここを回すだけで、あの言葉は2回目以降、こちらの耳には届かなくなります。
書籍『見込み客をAIに探させろ — 空リストに悩む営業のための、顧客発掘の完全自動化』(速水拓真)では、台帳の7列と6状況、重複を掃除するAI、眠っている行を起こすAIまでを、貼って動く形でまとめています。Amazonで見る
それでは、また。
🎁 読者特典3点セット(無料)
① 提案書3層プロンプト — 40分で6枚の提案書を出す、貼って動く完全版
② 調査カード3分プロンプト — 1社30分の企業調査を3分に(5社まとめ処理つき)
③ 商談前メモ5箱テンプレート — 商談5分前に読める1枚(AI整形プロンプト+記入例つき)
メールアドレスだけの登録で3点すべてすぐ受け取れます(解除はいつでも)。
> 📗 見込み客をAIに探させろ(Amazon・読み放題対象)
>
> 📗 シリーズ全3冊: 営業の仕事をAIに任せろ ・ 見込み客をAIに探させろ ・ 商談をAIに鍛えさせろ
>