速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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断られた直後の24時間を、無駄に過ごしていた話

初出: note

こんにちは。速水拓真です。


AIに仕事を任せ始めて、いちばん変わったのは、断られた日の夜でした。


断りのメールが届く。私はその日の残りを、ほとんど何もできないままでした。返信は書かない。リストは見ない。翌日の準備もしない。机に残ったのは、商談メモと、読み返すたびに悔しさが強くなるだけの断り文でした。断られた直後は感情が動いて、相手に書く気になれない。そして何を書けばいいかの型を持っていない。この2つが重なると、失注案件はその日のうちに、書類箱の底に沈みます。


沈めたまま、何年も過ごしてきたのです。


断りは、その日のうちに送り返すものだった


変わり始めたのは、断られたあとの文面作りをAIに任せたことです。


最初は見栄でした。悔しさを文章にする自分が情けなくて、その工程だけ外に出したのです。ところが外に出してみると、分かったことがありました。断られた直後の24時間は、相手の中でも「断った」という行為の記憶がまだ新しい時間です。この間に届いた返信は、断りの続きとして読まれる。1週間後に届く同じ文面は、唐突な再アタックとして読まれる。届く時間で、読まれ方が変わるのです。


20年、私は断りへの返信を「心の整理がついてから書くもの」だと思っていました。順番が逆でした。心の整理は、送ってからでいい。送るまでの24時間は、感情を保留にできる時間でした。


書き方の型も、外に出して初めて見えました。断りへの1通目に必要なのは、巻き返しの1文でも、立派な感謝でもない。たった3つです。


  1. 相手の判断を、正しい決定として承認する

  2. 相手の社内に、自社の痕跡を1つ残す

  3. 次の連絡を、相手に頼まずにこちらから宣言する


3番目がいちばん大事です。「また何かあったらご連絡ください」で終わる返信は、返信が来る見込みゼロの挨拶です。連絡するのは常にこちらで、相手ではありません。この1行を自分で書くと、どこかに巻き返しが混ざるか、「ご都合のよろしいときに」に崩れる。断りの直後の文章に、感情は毒なのです。


断り文を眺めていた3年分を、棚卸しした


AIに任せて型が手に入ると、次に手を出したのは、過去の失注でした。


断りの分類をAIに任せて、溜まり続けていた失注の記録を全部並べ替えてもらったのです。法人営業の断りは、眺めるとたいてい3つの型にしかなりませんでした。時期・予算の型。競合決定の型。そして担当者や社内事情で凍っている型。迷うものは全部、事実を仮定しない安全な置き場所である凍結型に入れる。


棚卸しを終えて、いちばん驚いたのは、次のチャンスが落ちている場所が型で決まる、という発見でした。時期・予算の型なら予算が復活する日。競合決定の型なら競合の契約が満了する日。凍結の型なら担当者が動く日。分類を機械に任せるだけで、私が次に立つべき日付が、勝手に決まっていくのです。


それまで私は、失注の山を「学びがたくさんある」という感想で眺めていました。感想では、1本も商談が戻りません。分類と日付を足すだけで、あの山は感想の山から、日付付きの案件リストに変わりました。


型は見せても、文面は渡さない


ここまで書くと、失注フォローがAIに丸ごと任せられるように聞こえるかもしれません。違います。線は引いてあります。


文面の生成はAIです。断りの感情を外に出す価値が、営業の全工程でいちばん大きい。私自身、断られた直後の文章に、悔しさの1文を混ぜずに書けたことは20年で一度もありません。だから生成は任せます。


でも、送信前には必ず1か所だけ見ます。AIが書いた「3月に改めてご連絡いたします」という宣言の月が、実際に私が連絡できる月になっているか。言っていない約束を、生成された文面から探す。月日と金額は、必ず自分で突き合わせます。AIは丁寧な文章を書きますが、私のカレンダーは見えません。


そして、断りを3つの型に分ける定義は、私が決めました。分類の作業は機械がやります。どこで次のチャンスを拾うかという考え方は、20年分の失敗から私が引き出したものです。任せているのは見張りと仕分けで、待ち伏せの思想は渡していません。


今週、ひとつだけ試すなら


手元に断りの文面が1本あるなら、まず型を1つ選んでください。判断できない場合は、何の事実も仮定しない凍結型に入れる。それで、分類は終わりです。


次に、返信を自分で書かずに、AIに1通作らせてください。入力は断り文をそのまま貼るだけ。出てきた文面は送信前に1か所だけ見る。次の連絡を宣言する月日が、本当に連絡できる月日か。そこだけ直して、24時間以内に送ってください。


送れたら、宣言した月を記録に打ってください。断りの1通は、失注を「消えた案件」から「日付付きの案件」に変える1通です。私が3年沈めていた書類箱の底は、実は、日付だけ打たれていない棚でした。


20年、断られたあとの時間は、忘れるための時間だと思っていました。今は分かっています。あの24時間は、忘れるためではなく、種を1つ埋めるためにある時間でした。忘れた振りをしていると、その案件は本当に消えます。種を埋めておけば、予算が動く月に、自分から届く。


書籍『商談をAIに鍛えさせろ — 20年目の営業が本気でAIを使い倒した記録』(速水拓真)では、断りが届いた直後の1通から数か月後の3通まで、失注を次に繋ぐ文面の型を、貼って動く形でまとめています。


それでは、また。


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