空いた20時間に、昔の営業を足してしまった話
こんにちは。速水拓真です。
AIに仕事を任せ始めて、最初に足し算をした日の話をします。
自動化が回り始めて3か月、私の週には20時間の空きができました。企業調査が1社3分になり、提案書は40分で6枚になり、商談の議事録は駅に着く前に固まるようになった。昔なら毎週末まで持ち越していた仕事が、平日の昼のうちに消えたのです。
空いた20時間。私はその時間で、まず何をしたと思いますか。
昔の営業を足しました。
足したのは、飛び込み訪問だった
1日3件だった飛び込み訪問を、6件に増やしました。
なぜそんなことをしたのか。空いた時間に営業を足すとき、頭に残っている足し方の候補は、若い頃にやっていた仕事だけだからです。私の頭の中のメニューには、20年前の営業がそのまま入っていました。時間ができたので、そのメニューを開いた。
結果を先に書きます。3か月で、ゼロ件です。
アポになったのは1件もありません。飛び込みは昔から私が弱い仕事で、時間を2倍にしたところで、弱い仕事が2倍の速さで空振るだけでした。6件のゼロは、3件のゼロの2倍速いゼロです。それだけの話でした。
いちばん静かに終わったのが、この失敗の大きさです。昔の営業は、時間が足りなくて上手くいかなかったと、ずっと信じていました。時間を2倍にしたら成果が2倍になるはずだった。でも数字は、何も変わらないと言いました。時間の量の問題ではなく、その仕事の設計の問題だったのです。
気づくのに、3か月かかりました。気づいた日の夜、帳簿を開いて、自分が空いた20時間を何に足したかを全部書き出しました。飛び込みが6件/日。あとは、AIの出力の見直しを毎日1時間。それだけでした。返ってきた時間のほとんどを、昔の仕事と、AIの仕事の確認に足していた。次の仕組みのために使った時間は、ゼロだったのです。
空いた時間を営業に返すと、自動化した意味が消える
この3か月で気づいたのは、もっと基本的なことでした。
空いた時間を営業に返すと、私は自動化する前の営業に戻ります。戻る先が昔の営業なら、成果も昔と同じです。つまり、空いた20時間を昔のメニューで埋めている限り、AIに任せた意味が毎週、少しずつ消えていく。
自動化は、仕事を速くするためにあるのではなく、時間を返すためにあります。そして、返ってきた時間を何に足すかは、営業の数を増やす判断とは別の判断でした。
そこで、帳簿を付けました。飛び込みはやめる。6件分の時間を、3つに分けます。
1つ。次にAIへ渡す仕事の手順書を書く時間。議事録の整形を任せたとき、私は「この形式で、この順番で」という指示を1行ずつ書いて渡しました。あれと同じ工程を、まだ任せていない仕事のために先に書いておく。手順書があれば、次の20時間が生まれる。
書いてお伝えします。手順書を書く時間は、最初は損に見えます。今週使える時間なのに、来週のために使うわけですから。でも、任せた仕事が毎週同じ20時間を返すように、手順書も毎週20時間を作ってきます。1回書いたら、あとはAIが動く。飛び込み6件は、同じ時間を投げても翌週ゼロに戻る。同じ時間の使い方でも、片方は蓄えて、片方は消えるのです。
2つ。外した商談のメモを読み返す時間。昔は時間がなくて、外れた記録は溜まる一方でした。読む時間が、ずっとなかったのです。
3つ。翌週に会う1社だけを、深く読む時間。リストの10社を薄く読むより、実際に会う1社を深く読む方が、商談は変わります。
任せる線
まとめます。時間を作るのはAIです。でも、返ってきた時間を何に足すかは、AIが決めてくれません。そこは、昔の営業に戻るか、次の仕組みに使うか、どちらにも振れる場所です。
私は3か月、昔の営業に戻ってから、ここを引き直しました。空いた時間は、営業の数に足すものではなく、営業の質に足すもの。そして、「仕事を減らす仕事」のための時間です。
20年間、私は忙しさをがんばる能力だと思っていました。違ったのです。がんばりは時間の使い方で、空いた時間に昔を足すか、次を足すかの選択が、そのまま次の20年になります。
今週、ひとつだけ試すなら
自動化や下書きで空いた時間が30分あるなら、その30分を、その日の営業に足さないでください。
次にAIへ渡す仕事を1つ選んで、手順を3行だけ書いてください。書いた3行でAIが動いてくれれば、同じ30分が毎週生まれます。空いた時間を増やすための時間が、いちばん安い投資でした。
私がこの選択を引き直したのは、3か月のゼロのあとでした。皆さんには、飛び込み6件のゼロを経験しないで、30分の手順書から始めてほしい。昔の営業に戻る道は、いつでも通れます。次の仕組みに使う道は、足したその週から、週末の帳簿が変わり始めます。
書籍『営業の仕事をAIに任せろ — 20年目の営業が本気でAIを使い倒した記録』(速水拓真)では、任せる仕事の選び方と、任せたあとに返ってくる時間の使い方まで、1冊を通して書いています。
それでは、また。
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