速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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初回メールをAIに丸投げしたら、覚えのない「1,000社」が入っていた話

初出: note

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こんにちは。速水拓真です。


前回は、商談がどこで落ちているかを数える話でした。今日はそのずっと手前の話をします。まだ一度も顔を合わせたことのない相手に、最初の1通を書く話です。この連載で、誰に送るかを根拠から逆算する話は前に書きました。でも、送ると決めた1社に何を書くかは、一度も書いていませんでした。私はここを20年、苦手にしてきました。


丁寧に書くほど、返信が来なかった


初回メールほど、書くのに時間がかかる文章はありませんでした。1通に40分。相手の業界を調べ、書き出しを練り、自社の良さを丁寧に並べる。丁寧に書くほど文章は長くなり、長くなるほど返信は来なくなりました。振り返れば、私が書いていたのはほとんど自社の紹介でした。冒頭から3行、自分の会社の話が続くメールを、見知らぬ相手が最後まで読む理由はありません。


20年、この繰り返しでした。書くたびに「今回はうまく書けた気がする」と思い、返信が来ないたびに「タイミングが悪かった」と自分を慰めていました。


AIに丸投げした夜、出てきた「1,000社」


AIに仕事を任せ始めた最初のころ、私はこれを丸投げすることにしました。宛先の材料を渡して、「この人宛に初回メールを書いて」と一言だけ頼みました。数秒で文章が出てきました。速い。きれいだ。読み返してみると、こんな文面でした。


「私どもは創業以来20年、製造業の業務効率化を支援してまいりました。これまで1,000社を超える導入実績がございます」


読み返した瞬間、背筋が冷えました。1,000社。これは、私が渡した覚えのない数字です。丸投げした出力には、それっぽい実績の埋め合わせが混ざるのです。もし1通でも出ていたら。先方は一度検索します。事実でなければ、その会社との商談はそこで終わります。出す直前に止まったのは、幸運でした。


負けていた理由は、3つあった


その文面を黙って読んで、負けている理由が3つ見えました。相手のことが一行も書かれていない。自社の話が3文続いている。返信の方法が書かれていない。この3つです。


原因は道具の性能ではありませんでした。依頼の混ざりです。「メールを書く」というひとつの指示の中に、性質の違う3つの仕事——相手を説明する、自社を説明する、依頼をする——が入っていた。混ぜて投げると、道具は無難な部分から埋めていき、全体が薄くなる。そして隙間を、もっともらしく埋めてくる。1,000社は、そこから生まれました。


3層に分けて、書き直させた


それから私は、書かせる前に層に分けることにしました。相手の層、自社の層、依頼の層。3つに切り分けて、それぞれに字数の上限を決めます。


相手の層は60字以内。表にある「気にしているはずのこと」と、その根拠の引用を1つだけ使います。「貴社の採用ページを拝見し、経理担当を募られていたのでご連絡しました」。事実を1つ、言い切らない。断定と褒め言葉は書かせません。前に書いた求人票の話では、引用を集めるところまでをやりました。今日の話は、集めた引用を1通の中のどこに置くかです。置き場所は、冒頭の60字しかありません。


自社の層も60字以内。誰に何をしているかの1文と、実績の数字を1つ。この数字は、必ず自分で選んで渡します。丸投げせずに済むのは、数字を渡す工程を自分の手に残しているからです。


依頼の層も60字以内。ここは依頼を書く場所であって、希望を書く場所ではありません。「お時間をいただけますと幸いです」は希望です。先方は、返信の方法が分からないままメールを閉じます。頼むのは「15分だけ、現状を聞かせてください。返信は候補の曜日を1行書くだけで結構です」のような、返事の文字数まで決まった小さな依頼だけです。初回で商談は頼みません。頼むのは、話を聞いてもらう15分までです。


順序は相手、自社、依頼で固定です。本文全体は250字以内。挨拶は「突然のメールを失礼します」の1文に決めています。「お世話になっております」は、面識のない相手には事実ではないので、初回には使いません。


層に分けた利点は、直すときに効きます。書き直しは層単位で頼めばよく、直したいのはたいてい1層だけです。全部を書き直させると、合格している層まで壊れます。


「返信は不要です」の一行


こうして書いたメールには、依頼の直後に1行だけ足します。「現状で問題なければ、返信は不要です」。私はこれを引きの一文と呼んでいます。入れると、丁重なお断りの返信が増えます。でも、返信ゼロより、断りの返信のほうが価値は上です。断り文には相手の名前と、今の現状が書いてあります。半年後の再送と電話の2手目が、そこから始められます。


火曜の朝10時に、5通出した


今週、この形を回しました。先週、採点で線を引いた表の、上位5社ぶんです。月曜の夜に1社目を通し、あとの4社は宛先の行を差し替えるだけで作りました。自社の層は1社目の文をそのまま使う。1社10分、5社で1時間足らずでした。手書きのころの40分が、10分になったのです。


差し替えの事故は、前の会社の名前が本文に残ることです。書き直させる文章ほど、この事故は起きます。だから宛名が宛先と一致しているかだけは、5社それぞれ、送る前に機械に検査させました。宛名を間違えた初回メールは、読まれる前に消える文章だからです。


火曜の朝10時に5通を出しました。昨日の夕方までに、返信が2通着いていました。1通は丁重な断りでした。「今は紙で回しているので、見送らせてください」。名前と現状が書いてある。半年後に使える1通です。もう1通は「木曜で結構です」の一行。断りを数に入れても、5通に対して2通。手書きのころは、5通に1通返ってくればよいほうでした。


任せる線


誰に送るかを決めるのは、人間です。頼み方を1つに決めるのも人間です。自社の数字を1つ選んで渡すのも、人間です。3層の枠に当てはめて文章を書くのは、機械です。宛名の一致や禁止語を送る前に検査するのも、機械です。出すか出さないか、出す時刻を決めるのは、人間です。私は火曜から木曜の10時に出すことが多く、月曜の朝と金曜の午後は避けています。返信の少なさを、20年で嫌というほど見てきたからです。


今週、ひとつだけ試すなら


まだ一度も接触していない相手を1社だけ選んで、3層で書いてみてください。相手のことを60字。自社のことを1文と数字1つで60字。返事の仕方まで書いた依頼を60字。送る前に確かめるのは1点だけです。本文の中の数字は、全部あなたが渡したものかどうか。私の「1,000社」は、機械が勝手に書いた数字ではありません。数字を渡さずに丸投げした、私の依頼の雑さが書いた数字です。


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それでは、また。


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