速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

1ヶ月で腐るのはリストの中身 — 余白30分の「鮮度管理」を運用表に足す設計

初出: Zenn

前回は、守った余白を商談の質に変える増し方を書きました(守った余白を商談の質に変える)。診断の15行棚卸しで「遅い・外れる・聞けない」を1つ直せば、増し1本目は完成です。

増しの2本目は、余白を見込み客リストの鮮度に変える増し方です。

リストが腐る3つの型

見込み客リストは、保存した瞬間から寿命が始まります。何もしていないのに壊れるのではなく、現実のほうが勝手に動いているからです。腐りの型は3つに集約できます。

  1. 役職変更型 — 保存時に「課長」だった担当が、いまは部長に昇進している。アプローチ文面の呼びかけだけが前の役職のまま残る
  2. 会社合併型 — 合併や社名変更で会社名とドメインが変わる。メールはエラーを出さず、静かに届かなくなる
  3. 担当異動型 — キーパーソンが退職・異動し、リストの行だけが取り残される

いずれもデータが間違っていたわけではなく、事実が更新された後にリストだけが止まっています。だから必要なのはデータの総書き直しではなく、動いた事実を週次で検出する仕組みです。

検出の設計 — 最終商談日 × 保存時役職の突き合わせ

鮮度チェックの入力は2つだけに絞ります。

  • 最終商談日(接触履歴の最新日付)
  • 保存時の役職・会社名(リストに書いてあるままの値)

出力は4列で固定します。会社名 / 経過日数 / 状態 / 推奨アクション。ここを増やさないのが設計のポイントで、「読み切れる表」のまま毎週続けられる形にします。

プロンプトは3行に収めます。

リストの各行について次を実行:
1. 最終商談日から本日までの日数を計算。30日超なら「鮮度:期限切れ」、90日超なら「鮮度:作り直し」
2. 役職・会社名・肩書を点検し、過去形・表記ゆれ・旧社名があれば「現実が動いた疑い」でマーク
3. 1行ずつ「会社名 | 経過日数 | 状態 | 推奨アクション」の4列で出力

出力はこの形で返ります。

山田設備工業 | 47日 | 期限切れ | 今週の架電リストへ移す
ABCパートナーズ | 98日 | 作り直し | 調査カード3分で再作成
佐藤商事 | 63日 | 現実が動いた疑い | 担当の実在を5箱メモで再確認

状態の分類は4つまでに限定します。期限切れ / 作り直し / 疑いあり / 問題なし。分類を増やすほど判定は曖昧になり、次週への引き継ぎが壊れます。

30分の運用に落とす — 月曜朝の固定枠

運用表に足すのは「鮮度判定」の1列だけです。毎朝の営業活動に手を入れる必要はありません。

項目 設計
時間枠 月曜朝の余白30分
入力 見込み客リストのCSV(全行)
処理 鮮度チェック3行プロンプト
出力 4列の判定表
記録 運用表の「鮮度判定」列へ追記

30分の内訳はこう割ります。

  • リスト貼り付けと実行:3分
  • 4列の出力を読む:10分
  • 期限切れ行を今週の接触リストへ移す:10分
  • 作り直し行に印を付けて素材棚へ回す:7分

「作り直し」と判定された行は、ゼロから書き直さないのがコツです。壊れた行の再調査をAIに回す——調査カード3分プロンプトにそのまま渡せば、1社30分の企業調査が3分に縮むので、作り直し自体は営業の時間をほぼ使いません。ここが30分の枠に収まる理由です。

検算 — 何もしないとどこまで腐るか

仮定:リスト200行・週あたり15行が期限切れに到達するペース。

  • 運用なし:15 × 4週 = 60行。全リストの3割が静かに当てにならない状態で月末を迎える
  • 運用あり:期限切れは毎週15行ずつ消化され、滞留は積まずにゼロ近傍を維持

つまり30分 × 4週 = 2時間で「3割の鮮度切れ」を防げます。リストの価値は件数ではなく鮮度の分布で決まるので、この2時間は、腐った3割を作り直す数日の労力よりはるかに安い投資です。

まとめ

  • リストの腐りは3型に集約:役職変更・会社合併・担当異動
  • 検出は「最終商談日 × 保存時役職」の3行プロンプト、出力は4列で固定
  • 月曜朝の余白30分・運用表に「鮮度判定」列を1つ足すだけ
  • 2時間/月の修繕で、リストの3割死を防ぐ

増し1本目(商談の質)と2本目(リストの鮮度)が揃ったので、守った余白の使い道が「量を足す」から「質と鮮度を保つ」へ変わってきました。

次回

増し3本目は、余白を次の商談の準備に変える増し方です。商談5分前のメモをAIに整形させて5箱に振り分け、5分で読み切る運用を設計します。実物は「商談前メモ5箱テンプレート」です。

この連載の続きは、はてなブログでも毎日書いています。

この記事の元になった書籍では、リストの鮮度管理を「余白の使い道」として扱っています。

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