速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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列の重みが、嘘をつきはじめた話

初出: note

こんにちは。速水拓真です。


AIに仕事を任せてから、いちばん静かに起きた失敗は、リストの点数が嘘をつきはじめたことでした。


先月まで順調に動いていたリストです。点数の高い会社から手紙を出す。返事が来る。面談になる。そのリズムが、ある月から急に止まりました。点数の並びは昔と同じ。上位は70点台で並んでいる。なのに返事の率だけが、半分に落ちていたのです。


点数は正しくて、順番が間違っていた


最初に疑ったのは、AIの採点ミスでした。


上位の会社を自分で読み直してみる。業種は合っている。規模も帯の中。兆候の点数も、備考のニュースに根拠がある。計算は間違っていなかった。間違っていたのは、もっと前の、点の付け方でした。


うちの採点表は、作った当時のまま動いていました。規模30点・成長30点・兆候40点。この配点は、18社ぶんの受注実績を並べて作ったものです。売れた会社の顔を写した、あの時点では正しい重みでした。


ところが1年間の商談を振り返ると、売れた会社の姿が、静かに変わっていたのです。去年まで私が受けていたのは、100人前後の会社。1拠点で、社長が一人で決める会社でした。今年に入って取れた商談を見ると、従業員300人を超える会社が増えている。工場を増やした会社が、管理の手間に困って買い始めていました。


売れる会社が、別の帯に移っていたのです。なのに採点表は、100人前後の会社に最高点を渡したまま、300人の会社を隣の帯で置いていました。点数というのは、ある時点の自分の思い出を固めたもので、実売はそのあとも動いていく。動いたあとの世界を、古い思い出の順番で眺めていたのです。


嘘の発見のしかた


では、どうやって発見したのか。特別なことはしていません。


商談が終わった会社を、表に戻す作業がもともとありました。勝ち案件には受注額と受注のきっかけを、負けた案件には断り理由を、それぞれ1行。私の表には、この行が半年ぶん溜まっていました。


ある夜、その行をAIに渡して、1つの質問を送ったのです。"半年間に受注に至った会社を、いまの採点表の各軸で採点すると、点数はどう出ますか。受注に至らなかった会社と比べて、どこで差がついていますか"。


返ってきた答えは、単純でした。受注した会社は、規模の得点が低めの代わりに、成長の得点が高い。伸び率と、求人の数。この2つが当たりの会社に共通していて、いまの表はそこを薄く振っていた。


要するに、成長の配点を10点ほど盛ればいい。そういう話でした。


ここまでで、AIがやったことは1つも決断ではありません。行を並べ、点を出し、差のある場所を教えただけです。でもこの1枚の差が、私は半年見つけられなかった。何百回と商談をしながら、その場の印象のなかに埋めてしまったのです。数字に落とし直す場所を作るまでは、売れ方の変化に、誰も気づけないのです。


変えたのは、配点の1行でした


直すのは、採点表の1行でした。成長の配点を10点上げて、規模から10点を引く。あわせて、成長の帯を自社の商材に合わせる。継続型の商品を売っているのですから、3年後も付き合う会社が当たるべきだという理屈で、伸び率の帯を1段ずつ厚くしました。


手で直したあと、リストをもう一度並べ替えてもらう。すると、上位の顔が入れ替わりました。以前の上位にいた500人規模の「安定した大手」が3社、下位へ落ちた。先月まで20位あたりにいた、2拠点目を建設中の100人台の会社が、上位に上がってきた。


ここで気づいたのが、並べ替えの重みにも賞味期限がある、ということでした。


点数の列を作ったとき、私はそれを「完成品」だと思っていました。一度思想を書き込めば、あとはAIが毎月面倒を見てくれる。ところが実際には、重みは生き物でした。会社の売れ方は変わる。その都度、表のどの列を信じるかに、営業の判断を置き続ける必要がある。18社の受注実績から配点を引いた1年前の私は、そこまで書いていなかったのです。


AIに渡したのは、差を見つける目


任せる線をまとめます。


点数の計算はAI。並べ替えもAI。受注と失注の行を並べて、差の出場所を数字として教えるのもAI。半年ぶんの行を眺めて「勝ち負けの顔が変わりました」と報告する仕事は、私の記憶力では間に合わなくなりました。そこは渡して正解だった。渡さなければ、私はいまも100人帯の最高点を信じ続けていました。


渡していないのは、2つです。差を見て、配点のどこを動かすか決めること。そして、動かした重みに名前を書くこと。表の採点表タブの片隅に、私は「2026年9月改訂。成長+10・規模−10。根拠は半年の受注12社」という1行を足しました。どの重みをいつ信じたか。これを残しておかないと、次に改訂するとき、この数字が思想なのか勘なのか、自分でも分からなくなるからです。


重みの見直しは判断であって、計算ではありません。だからこそAIに任せられない。そして判断が正しかったかどうかの検証だけは、計算なのでAIに任せられる。この往復を四半期に1回、30分だけ回しています。


今週、ひとつだけ試すなら


スコアリングしているリストが1つあるなら、受注と失注の行を10件だけ書き出して、AIに渡してください。


お願いは1つで構いません。"この10社を、いまの採点表で採点したら、売れた会社と売れなかった会社の差は、どの軸に出ますか"。


出てきた差が、配点を動かす十分な根拠になることもあります。ならないこともあります。その場合、今は変えない、という判断自体が今日の仕事です。大切なのは、重みが自分の思想であり続けているかどうかを、数字の差で確認する回数を持つことでした。


点数は裏切りません。裏切るのは、点数の付け方です。付け方を直すのは、AIでも誰でもなく、そのリストで勝負している本人の仕事です。


書籍『見込み客をAIに探させろ — 20年目の営業が本気でAIを使い倒した記録』(速水拓真)では、採点表の作り方から、受注実績で配点を見直す方法まで、空リストから始める営業の自動化を、貼って動く形でまとめています。


それでは、また。


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