速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

商談5分前のメモをAIが5箱に振り分ける — 「読み返す」をやめて5分で準備を終える設計

初出: Zenn

前回は、余白をリストの鮮度に変える増し方を書きました(1ヶ月で腐るのはリストの中身)。月曜朝30分の鮮度管理で、リストの3割死を防ぐ運用が回り始めています。

増しの3本目は、余白を次の商談の準備に変える増し方です。

準備が15分になる構造

商談前の準備が重いのは、情報量ではなく並び順が毎回ゼロからだからです。メールの履歴、見積もりの履歴、前回の議事録——全部あるのに、読む順番が決まっていないので、毎回15分かけて「全部をざっと」読んでしまう。

鮮度管理の考え方と同じで、必要なのは網羅ではなく並び替えの自動化です。商談5分前に読める1枚に、AIが振り分けてくれます。

5箱の振り分けルール

メモの箱は5つに固定します。

  1. 相手の現状 — 前回商談までに分かっている事実のみ(推測は入れない)
  2. 未解決の懸念 — 相手が最後に口にした不安・反対意見
  3. 今日の提案の芯 — 今日初めて出す数字・条件(1行だけ)
  4. 聞きにくい1つ — 今日こそ聞きたいが、今まですべての商談で聞けなかったこと
  5. 引き金 — 商談後24時間以内に送るお礼メールの一文(相手の言葉をそのまま使う)

箱の数を6以上に増やすと読む時間が伸びて5分に収まらない。箱が5つである理由は、5行を読む時間が商談前の余白に収まるからです。

プロンプト本体

商談30分前に、商談メモの素材(メール履歴・議事録・見積もり履歴)を丸ごと貼り付けて実行します。

入力した商談素材から次を実行:
1. 事実と推測を分け、事実のみ5つの箱に振り分ける(相手の現状/未解決の懸念/今日の提案の芯/聞きにくい1つ/引き金)
2. 各箱は2行まで。5箱で10行を超えたら「今日使わない素材」に回す
3. 最後に「5分で読む順番」を1行で添える(例: 4→2→3→5→1)

出力はこう返ります。

【相手の現状】導入検討は部長単独判断。予算は今四半期分まで
【未解決の懸念】「他社引入の実績が不足」→ 先週の返信でも同じ文言
【今日の提案の芯】既存3社の導入事例を1枚で見せる(添付済)
【聞きにくい1つ】決裁は部長1名か、上の承認が入るか(毎回回避してきた)
【引き金】「実績が不足」という言葉を、24時間以内のお礼メールの引用に使う
読む順番: 4→2→3→5→1

5分の運用 — 順番を付けるのが設計の核

箱だけ作って終わりにすると、また「全部ざっと」に戻ります。運用表に足すのは「読む順番」の1行です。

時点 行うこと 所要
商談30分前 素材を貼ってプロンプト実行 1分
商談5分前 出力を「読む順番」で読む 5分
商談直後 議事録10分へ接続(前回までの運用と同じ) 10分

5箱のうち「聞きにくい1つ」の箱が最も価値が高いです。毎回聞けなかった質問は、商談のたびに素材の末尾に沈んでいくからです。AIに「今まですべての商談で聞けなかったこと」を毎回出させると、沈んだ質問が箱の先頭に戻ります。

検算 — 15分が5分になった数字

仮定:1商談あたりの準備15分・週7商談。

  • 運用なし: 15 × 7 = 105分/週が準備に消える
  • 運用あり: 1分(AI振り分け)+ 5分(読む)= 6分 × 7 = 42分/週
  • 差引: 63分/週 = 月に4時間強が商談本番側へ戻る

さらに「聞きにくい1つ」が出題され続けることで、月に1回は「ずっと聞けなかった質問」が商談で口から出る。これは準備時間の削減とは別に、商談の質を変える効果です。

まとめ

  • 商談前準備が重い原因は情報量ではなく「並び順が毎回ゼロから」
  • 5箱(現状/懸念/提案の芯/聞きにくい1つ/引き金)にAIが振り分け、2行までに制限
  • 「読む順番」の1行を運用表に足す——これが5分で読み切る核
  • 週105分→42分。月4時間強の回収+「ずっと聞けなかった質問」の口に出る効果

増し1本目(商談の質)・2本目(リストの鮮度)・3本目(次の商談の準備)で、守った余白の使い道が3方向に固定されました。導入1か月目の「増し」はここで一段落です。

次回

増し編が一段落したので、次は導入1か月目の総点検です。3つの増しを入れた状態で、効果測定3指標(準備工数・商談数・提案数)がどう動いたかを、初回比較レポートの続きとして読み直します。

この連載の続きは、はてなブログでも毎日書いています。

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