速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

削減で生まれた余白を雑務に吸わせない — 「時間の使い道」を部署で先に決める設計

初出: Zenn

前回は、見積もりと実測の差の読み方と、削減が止まった工程の直し方を書きました(見積もりと実測の差を読む)。差を直して見積もりどおりに回り始めると、メンバーの週に数時間の余白ができます。

ここで必ず出るのが、この質問です。

削減で空いた時間は、そのままにしておけないのか。何も決めなければ、自然に商談が増えるのではないか。

答えは決まっていません。減った時間は放置すると、2〜4週で雑務に吸われて元に戻るのが実態です。空いた時間に「急ぎの資料作り」「口頭で頼まれた調べもの」が入ってくる。雑務は決まり文句の「5分だけ」で入るので、断りにくい。結果、1か月後には削減効果が見えなくなります。

今回は、減った時間の使い道を、減る前に部署で決めてしまう設計を書きます。使い道を決めていない余白は、名前のない貯金と同じで、誰かが勝手に引き出します。

使い道は「1つ」に絞る

失敗しやすいのが、余白の使い道を「商談増加と育成と改善活動」と3つ並べることです。3つに割ると週2時間なら40分ずつになり、どれも効果が出る前に次の割り込みが入ります。

部署の余白は1つに絞る。 選び方は、次回の目標から逆算します。

部署の次の目標 余白の使い道
売上を伸ばす 既存顧客の追加提案の準備
引き継ぎを減らす 育成メンバーの同行と振り返り
現場を回しやすくする 提案書テンプレートと手順書の改善

表の使い方は単純です。上から1行だけ選び、残りの行は「今期はやらない」と書いて固めます。書かないと「時期が来たらやる」になり、実質「ずっとやらない」と同じです。

AIを「吸われない時間」の番人に使う

余白を守る上で、AIが2つ仕事を担えます。

1つ目は、雑務の正体を早めに見せることです。 「5分だけ」の頼まれ事が本当に5分かどうかは、頼まれた瞬間には分かりません。AIに頼まれ事の内容を貼って「この処理にかかる工程と時間を工程表として出して」と聞けば、実は30分かかる仕事であることが先に分かります。30分と分かれば「今週の余白には入れない。来週の通常業務に回す」と答えられます。

あなたは営業部署の業務アドバイザーです。
以下の依頼を処理する工程と所要時間を估算してください。

依頼内容: (貼り付け)

出力形式:
- 工程の内訳(1工程ずつ、概算分つき)
- 合計時間
- 5分で終わる仕事かどうかの判定

2つ目は、余白の消化状況を週1回見せることです。 毎週金曜に、メンバーが「今週の余白を何に使ったか」を1行でAIに貼り、一覧表にまとめさせます。使い道から離れたものが並び始めたら、その週に割り込みが入った証拠です。表が1枚あるだけで「決めた使い道から逸れている」ことが、感覚ではなく事実として扱えます。

# 週次の余白レポートを一覧化する(メンバーの1行報告をまとめる)
reports = [
    "田中: 既存顧客A社の追加提案の準備に2時間",
    "佐藤: 育成メンバーの同行と振り返りに1時間",
    "山本: 急ぎの資料作成に1.5時間",
]

target = "既存顧客の追加提案の準備"  # 部署が決めた使い道

for line in reports:
    name, body = line.split(":")
    status = "OK" if target.split()[0] in body else "CHECK"
    print(f"{name.strip():>4} | {status} | {body.strip()}")

この程度の集計なら表計算でもできますが、AIに任せる利点は報告のハードルが下がることです。「AIに1行貼るだけ」なら金曜の30秒で済み、集計する人も不要になります。

決めた使い道は「週の最初」に置く

守られる余白には共通点があります。週の最初の時間帯に、使い道の仕事を先入れすることです。

  • 月曜の午前2時間を「追加提案の準備」としてブロックする
  • 火曜の午前に「同行と振り返り」を入れる
  • ブロックには必ず件名を付ける(「余白」ではなく「A社追加提案の準備」)

逆に、週の後ろに追いやられた余白はほぼ守られません。金曜の午後に「空いていたので準備をした」では、その前に割り込みが入ります。余白は先入れした者勝ちです。

1か月後に「守れたか」を1行で確認する

運用を始めて1か月したら、確認は1行で足ります。

今月、決めた使い道に使った時間は週平均◯時間か。

守れていれば、削減効果が目標に直結しています。守れていなければ、原因は次のどちらかです。

  1. 割り込みが多い → 「5分だけ」の判定をAIに見積もらせる運用を見直す
  2. 先入れできていない → 週の最初のブロック運用からやり直す

いずれも直し方は1つずつでよく、両方同時に直すと原因が見えなくなります。

まとめ

  • 減った時間は放置すると雑務に吸われる。使い道は部署で1つに絞る
  • 「5分だけ」の正体はAIに見積もらせる。30分なら通常業務に回す
  • 消化状況は金曜に1行で報告、AIが一覧化する
  • 余白は週の最初に先入れする。後ろに置いた余白は守られない
  • 1か月後に「守れたか」を1行で確認し、原因は1つずつ直す

次回

使い道を決めて余白を守れるようになると、次に見えてくるのが「この回し方を、あなたがいなくても回る形に残す」問題です。次回は、決めた使い道・判定・先入れを、あなたが止まっても部署が回し続けられる「型」に落とす方法を書きます。


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