フォローアップ — 「続かない」を仕組みで潰す
前回(提案書を「書く」から「直す」へ — AI初稿活用の型)までで、見込み客リストの収集から企業調査、そして提案書まで、書籍4領域のうち3つの型を揃えました。最後の1つが、今回のフォローアップです。
提案書を送ったあとの案件、いまどう動いていますか。
「そういえば、あの案件返事が来ていないな」と思い出すのが3週間後。慌てて送る「その後いかがでしょうか」に返事はなく、2か月後、先方は別の業者に決めていた。私も現場時代、この負け方を何度もしています。営業の失敗は、断られたことで起きるのではありません。忘れている間に、静かに起きます。
前回予告したとおり、今回は相手の都合で止まった案件を、忘れず・しつこくならずに動かし続ける仕組みを紹介します。AIに任せるのは文面づくりではなく、その手前の「どの案件に、いつ触るか」の思い出しと仕分けです。まず現状を数字で確認します。
まず数える — 「思い出す」に給料を払っている
1人で抱える案件は、多い時で20〜30件です。この管理を私たちは記憶でやろうとします。朝、机に着いて今日やることを思い出すのに10分。どの案件を今日触るかの判断に15分。文面を書くのに1通10分。これが毎日あると、思い出すだけで月8時間です。
しかもこの8時間は、案件が増えるほど膨らみます。記憶という引き出しは、中身が増えるほど取り出しにくくなるからです。その結果、現場では次の3つが起きます。
- 思い出せない案件が出る — 手帳の片隅の「K社・上の承認待ち」が、何の案件か分からなくなる
- 思い出した案件だけ触る — 直近の商談や声の大きい案件ばかり進み、静かな案件が沈む
- 文面が「その後いかがでしょうか」に劣化する — 何を話したか思い出せないから、無難な一文しか書けない
フォローが続かないのは、気合でも性格でもなく、「思い出す」を人間がやり続けている構造の問題です。ならば、思い出しは仕組みに降ろします。
型 — 案件カード1行に「先方の次」を書く
私の仕組みは単純です。案件ごとに、次の6項目を1行で持ちます。名付けて「案件カード」です。手帳でもスプレッドシートでもよくて、表にしなくても大丈夫です。
- 案件名・相手(例:〇〇工業 倉庫管理システム/K部長)
- 最終接触日(例:9/1 商談)
- いまの状態(例:見積送付済み・返事待ち)
- 先方が言った「次」の一言(例:「予算は10月の経営会議で通る見込み」)
- 自分の約束(例:10月上旬に更新見積を送る)
- 次の連絡日(例:10/2)
いちばん大事なのは4番です。フォローの文面の中身は、ここからしか出てきません。「経営会議が終わった頃」に「会議、無事に終わりましたか」と送れるのは、この1行があるからです。逆に、この1行のない案件は、思い出しても「その後いかがでしょうか」しか書けません。
AIに渡す指示文 — 週1回、月曜に貼るだけ
案件カードが並んだら、週1回、AIに貼って仕分けさせます。以下をそのままコピーして、[ ]に手元の案件カードを貼って使ってください。
あなたは法人営業のフォロー管理担当です。私が貼る案件カードを仕分けてください。
# 案件カード
[手元の案件カードを、1案件1行のまま全部貼る]
# 出力1:今週やるリスト
・今週連絡すべき案件を、理由つきで最大3件まで挙げる
・各案件に、送る文面のたたき台を3行で添える
・文面には「先方が言った『次』の一言」に触れる1文を必ず入れる
# 出力2:あえて触らない案件
・今週連絡するとしつこくなる案件を、理由つきで挙げる
・「待つべき理由」がカードに書けない案件は、そのまま触らない
# 絶対ルール
・カードに書いていない事実・約束・数字を文面に入れない
・「その後いかがでしょうか」だけの文面は出さない
・押し売りになる表現(期限や値引きの匂わせ)は入れない
この指示文の肝は、出力2を入れたことです。AIに「送る」だけでなく「送らない」判断も出させると、しつこくなる不安が減ります。この不安こそ、フォローが3日で続かなくなる最大の原因だからです。出力1の文面は、あくまでたたき台です。送る前に商談メモと突き合わせて、事実だけを確認します。AIの守備範囲は、第5回と同じく「書いてあることを文章にする」までです。
実戦 — 私の失敗2つ
この仕組みに行き着く前に、私は2つの失敗をしました。
1つ目は「音信不通」です。製造業の案件で、「上の承認が下りたらすぐ動きます」と言われていました。承認は翌々週には下りていたのに、私の手帳には「承認待ち」のまま載っていました。3週間放置してから連絡したら、「動けると思って待ってました。もう別にお願いしました」と。先方は待っていたのに、私だけが忘れていた。フォローの負けは、しつこさでなく、黙っていることで起きます。
2つ目は「毎週の催促」です。別の案件では、逆に毎週「その後いかがでしょうか」を送り続けました。返事は3週目に来ました。「検討しますので、しばらくお待ちいただけますか」。しつこかったのではなく、中身がなかった。先方の「次」に触れない文面は、温度ではなく迷惑です。以来私は、文面のネタがカードに見つからない案件は、まだ連絡する時期でないと判断しています。
情報の取り扱い — 商談の原話だけを入れる
フォローの仕分けでAIに渡すのは、案件カードと、商談で先方が実際に言ったこと(原話)だけにします。見積の金額・先方の社内の事情・他から聞いた話は、文面の材料にしません。商談メモを貼るときは、事実を書いた行だけを使い、「〜だと思う」という推測の混ざった行は除きます。推測を入れると、それらしい作り話が返ってくるからです。
今日やること
- 進行中の案件を全部書き出す(15分)— 案件名と最終接触日だけで構いません。まず出し切ります
- 各案件に「先方が言った次」の一言を書き足す(15分)— 商談メモや議事録から拾います。思い出せなければ「不明」と書いて先へ
- 指示文に貼って、今週のリストを出す(10分)— 出た文面は、送る前に商談メモと突き合わせます。実際に送るのは2件までで十分です
- 来週の月曜に、同じことをやる(10分)— 2週目からが本番です。まず2週間続けてみてください
次回から
次回、第7回は「コピペで使える3層プロンプト — 提案書の精度が変わる」です。4領域の型が揃ったところで、連載の締めくくりとして、提案書の初稿をAIに書かせる3層構造の指示文を紹介します。第5回でお伝えしたとおり書籍第5章に全掲載しているもので、読者特典のプロンプト集にも同じものを収録しています。
この連載は書籍『営業の仕事をAIに任せろ — 見込み客リストから提案書まで、1人で回す営業自動化』(Kindle発売中)の内容をもとに、加筆して公開します。
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