速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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コピペで使える3層プロンプト — 提案書の精度が変わる

前回(フォローアップ — 「続かない」を仕組みで潰す)で、書籍4領域の型が揃いました。第5回(提案書を「書く」から「直す」へ)では、AIに書かせた初稿を「直す」4か所の話をしました。そのとき、初稿を書かせる指示文そのものは書籍第5章に全掲載している、と書いて端折りました。

今回はその埋め合わせです。第6回末尾で予告したとおり、4領域が揃った締めくくりとして、提案書の初稿をAIに書かせる3層構造の指示文を全文紹介します。コピーしてそのまま使えます。読者特典のプロンプト集にも同じものを収録しています。

「AIに提案書を書かせてみたが、立派な文章は出るのに使えない」——この悩みの原因は、AIの性能でも言葉づかいでもありません。渡す材料の設計にあります。AIに任せる前に、まずその材料を数字で確認します。納得のない自動化は3日で続かなくなるからです。

まず数える — 提案書は「900字の材料」からできる

提案書の初稿は、6枚構成で各枚250字以内。全文で1,500字前後です。この1,500字を作るためにAIに渡す材料は、3層に分けて、層1が500字以内、層2が300字程度、層3が4行。あわせて900字足らずです。

しかも層1の500字は、1回書けば全案件で使い回せます。第5回に「提案書の7割は案件が変わっても書き換わらない」と書きましたが、その7割の正体が層1です。毎回新しく書くのは、層2の300字と層3の4行だけ。

下書きに3時間かかっていたのが40分前後に縮む仕組みの入口は、意外なことにこの「材料900字」です。書く時間を削るのではなく、書くための材料を先に用意しておく。順番を逆にするだけで、初稿そのものは2〜3分で出ます。

なぜ「1枚に全部書く指示」は失敗するのか

失敗する指示文は、たいてい材料の区別をせず、全部を1枚に書いて投げています。

「点検報告書クラウドを中堅製造業に提案する提案書を書いてください」——これでもAIは提案書の形をした文章を出します。見た目は整っています。しかし読むと、顧客の課題はAIの想像で、効果の数字はAIの発明です。「生産性が30%向上します」が当然のように並び、30%の根拠はどこにもありません。私が初稿をほぼそのまま出しかけた第5回の失敗も、同じ場所で起きています。

AIが数字を作るのは、性格の問題ではなく構造の問題です。材料が渡されていない穴は、AIが「見た目の妥当な材料」で埋めます。だから直すのは言葉づかいではなく、入力の設計です。事実と数字は人間が置く。文章の組み立てはAIに任せる。この分業を作るのが、3層入力です。

しかも決裁者は、この穴を必ず突きます。崩れる数字が1つ見つかると、隣に並んだ合っている数字まで信用が落ちます。突かれても崩れない数字だけが、提案書の中で値になります。

3層入力の設計

入力は次の3層に分けます。

  1. 層1 自社情報 — 事業、実績、標準価格、強み。半年から1年は変わりません。1回書いて保存し、全案件で使い回します
  2. 層2 顧客情報 — 顧客の規模、重点施策、現場の原話、決裁の道のり。案件ごとに埋めます
  3. 層3 提案内容 — 何を、いくらで、いつから。1案件につき4行です

提案書の中身のうち案件が変わっても書き換わらない7割が層1。残りの3割が層2と層3です。どの層がどの枚に入るかは、設計で自動的に決まります(後述)。

層1 — 1回書いて、資産にする

層1に書くのは5ブロックです。①事業内容(1行)②提供物(3行まで)③実績の数字④標準価格⑤強み3つ。

ルールは1つだけ。載せていい数字は「社内で出所を説明できるもの」に限ります。「導入137社」は顧客台帳を出せば説明が付くので載ります。「現場を劇的に改善」は出所がないので載せません。パンフレットのキャッチコピーを層1に入れると、AIはそれを事実として2枚目に並べます。AIにとって層1は自社のファクトブックで、載せたものだけが事実になるからです。

標準価格は、1行にまとめず品目単位で並べます。「試験導入・10ID・6か月・月3万円」のような小さい枠を1行入れておくと、6枚目の代替案が毎回書けるようになります。保存先はメモ帳でもスマホのメモでも動きます。更新は価格改定と決算期の実績確定のたび。半年に1回、15分の見直しで持ちます。

層2 — 原話をそのまま入れる

層2は5項目です。①正式名称と規模②今期の重点施策③現場の原話④競合・代替の状況⑤決裁の道のり。1項目に1個、(出所: )を付けます。情報源は、会社HP、決算資料、ヒアリングメモ、展示会でもらった資料の4つで足ります。

層2の要は原話主義です。商談で聞いた言葉を、要約せずそのまま入れます。

  • 要約「コスト意識が高い」
  • 原話「点検記録を紙で書いて、月末に3人が2日かけて集計している」

要約からは、どの会社にも当てはまる一般論しか書けません。原話からは、人数・日数・行為のそろった課題が書けます。第4回の調査カードの箱と、商談中にスマホのメモに打った相手の言葉が、そのまま層2の材料になります。言い換えない、まとめない。この2点だけ守ります。

層3 — 人間が決める4行

層3は4行です。①何を②いくらで③いつから④効果の元数字

4行目が、この道具の心臓部です。①削減・短縮前の数字②導入後の見込みと根拠1行③換算の単価——の3つを並べます。この行を空欄にすると、AIは「30%の効率向上」を作ります。数字は1回考えて人間が置く。割り算はAIに見せる。この分業が、3層入力の核心です。

指示文本体 — コピーして動きます

ここからが道具です。囲みをそのままコピーして、ChatGPTやClaudeなど、指示文を貼れるAIに貼ります。囲みの中身を読む必要はありません。触るのは(ここに貼る)の3か所だけです。

あなたはBtoB法人営業の提案書ライターです。下の3つの層に入力された情報だけを使い、6枚の提案書を書いてください。

# 層1 自社情報
(保存した層1をここに貼る)

# 層2 顧客情報
(案件ごとの顧客情報をここに貼る)

# 層3 提案内容
(4行をここに貼る)

# 出力の形
「1枚目【結論】」から「6枚目【条件】」まで、次の順番と内容で書きます。どの枚も250字以内。順番は変えません。

1枚目【結論】3行。1行目に何を・いつから・どのくらいの期間で提案するか。2行目に総額(初期費と月額)。3行目に提案の効果を1文(層3の数字から1つだけ)。金額は2行目の1回だけ出します。
2枚目【事実】顧客の状況3〜4個と自社の実績1〜2個を書きます。各事実の末尾に(出所: 〇〇)を付けます。3つの層に出所がない事実は書きません。
3枚目【課題】層2の原話を「 」のまま引用します。言い換えません。原話と2枚目の事実を組み合わせて、顧客が現在払っている手間を書きます。
4枚目【提案】層3の中身を、層1の強みとつなげて、導入の流れを3ステップで書きます。
5枚目【費用】層3の金額を明細で並べます。次に、層3の「効果の元数字」だけを使って割り算を1つ以上行い、使った数字と計算式をそのまま文字で書きます。3つの層にない数字は使いません。
6枚目【条件】この提案が選ばれなかった場合の条件として、次の一手を2つ書きます(例: 試験導入版、範囲を絞った版)。金額は層1の価格表の範囲で組みます。

# 絶対ルール
1. 3つの層に書かれていない数字は、効果の試算も含めて一切書きません。
2. (出所: )を付けられない事実は書きません。
3. 層2の原話は言い換えず、「 」のまま使います。
4. 「革新的」「最適」「劇的」といった形容詞は使いません。
5. 顧客名は層2の正式名称だけを使います。

貼って送信すると、2〜3分で6枚が出ます。案件を変えるたびに、新しいチャット(スレッド)を開いて層1から貼り直すのが作法です。同じチャットで案件を続けると、前に扱った顧客の名前が混ざる事故が起きます。

出た6枚は、第5回で書いた「直す4か所」で確認します。1枚目の結論の数字、2枚目の事実の出所、5枚目の計算(電卓で打ち直す)、6枚目の条件。5枚目の割り算が合わなければ、直すのはAIの出力ではなく層3の4行目です。入力を直して、もう1回貼ります。

失敗パターン3つと直し方

この道具を使っていて出会う失敗は、だいたい3つに決まっています。

  1. 「業界平均」が出る — 層2に一般論(「業界では紙運用が多い」)を書いたのが原因です。一般論を消して、出所つきの事実と原話だけを残します
  2. 前の案件の顧客名が混ざる — 同じチャットで案件を続けたのが原因です。案件ごとに新しいチャットを開きます
  3. 6枚目の条件が薄い — 層1の価格表に代替の部品がありません。「試験導入」の1行を価格表に足しておきます

3つとも、直す場所は3層のどれかです。指示文本体はいじらない。これを守ると、失敗の切り分けが3択に絞られ、原因探しに時間がかからなくなります。

情報の取り扱い — 層に入れるもの、入れないもの

層1の標準価格や実績は、提案書に載せるものなので入力して問題ありません。一方で、他社から受けた見積の内容や、先方が「社内だけで」と言った話は、層に入れません。第5回と同じ線です。AIは渡した情報の水準でしか書けないので、守秘の線は入力側で引くのが確実です。

今日やること

  1. 層1を書いて保存する(45分)— 5ブロック、500字以内。実績の数字には1つずつ(出所: )を付けます。社内出所で構いません
  2. 過去の案件を1件選び、層2と層3を埋めて1回流す(40分)— 実案件でなくて構いません。出た6枚を、1枚目の金額・2枚目の出所・5枚目の割り算の3点で照合します
  3. うまくいったら、次の本番案件で使う(2〜3分)— 2件目からは層2と層3を埋めるだけです
  4. 1行だけ記録する(2分)— 「初稿が出るまで何分かかったか」。次の自分が読む記録です

読者特典について

今回の3層プロンプト、第4回で紹介した調査カードの指示文とメモの5つの箱——この3点は、書籍の読者特典のプロンプト&テンプレート集に同じものを収録しています。LPのメール登録から無料で受け取れます(書籍の巻末にも同じ案内があります)。手元に置いて使い回したい方は、この記事末尾のリンクからどうぞ。

次回から

次回、第8回は「私の自動化ログ — 実業務でAIに任せた結果」です。ここまで紹介してきた4領域の道具を実際の業務で回したとき、何が変わって何が変わらなかったか。実録のログとして紹介します。


この連載は書籍『営業の仕事をAIに任せろ — 見込み客リストから提案書まで、1人で回す営業自動化』の内容をもとに、加筆して公開します。

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