私の自動化ログ — 実業務でAIに任せた結果
第7回(コピペで使える3層プロンプト)で、提案書の初稿をAIに書かせる3層構造の指示文を全文紹介し、4領域の道具が出揃いました。第7回末尾で予告したとおり、今回はその締めくくりです。道具を実際の業務で回したとき、何が変わって、何が変わらなかったか。実録のログとして書きます。
ログの取り方 — 記録は1行だけ
前提として、私は細かいログを取りません。第7回で「1行だけ記録する」と書いた方針は、運用でもそのままです。記録するのは「この作業、AIに任せて何分かかったか」の1行。日付と所要時間と一言だけです。数値を細かく追うと記録そのものが負担になり、記録が3日で続かなくなります。第2回(どの業務から手を付けるか)の「納得のない自動化は3日で続かない」は、記録にも同じことが言えます。
ログで見えたもの — 変わった時間
たまってきた1行を並べると、こうなりました。いずれも第2回〜第6回で紹介した数字どおりです。
- 見込み客リストの作成 — 手作業なら丸1日(8〜10時間)の作業が2時間。毎月1〜2回の業務なので、月あたりの浮きは大きい
- 企業調査 — 1社30分が3分。商談が週5〜8件あると、この差が週単位で効いてくる
- 提案書の初稿 — 下書きに3時間かかっていたものが、材料があれば2〜3分で出る。直すのは第5回の4か所で、ここに40分
- フォローアップ — 第6回で書いた「思い出す」月8時間が、月曜に案件カードを貼るだけになった
ここまでは、この連載で既に書いたことの裏付けです。ログを取り続けて新しく見えたのは、むしろその先の3つでした。
変わらなかったこと — 最初に言っておく
対話の時間は、準備をAIに任せても自動では増えません。第1回(営業の時間は「準備」に食われている)で書いた「対話は勤務時間の8%しかない」の数字は、準備を減らしただけでは動きません。浮いた時間を商談に充てるか、学びに充てるかは自分で決める。AI任せにすれば勝手に商談が増える、という話ではない。ここは誠実に書いておきます。
AIが判断を代行することもありません。第6回(フォローアップ)で「送る」だけでなく「送らない」判断もAIに出させると書きましたが、出てきた文面はあくまでたたき台です。送る前に商談メモと突き合わせて、事実だけを確認するのは人間の仕事のままです。AIの守備範囲は「書いてあることを文章にする」まで。これは運用を重ねても変わりませんでした。
反応が大きいのは、道具の話より「続け方」の話です。導入を支援してきた中で、指示文の細部より「どうすれば3日で終わらないか」の話のほうが関心を集めるのは、昔から変わりません。道具はこの連載に全部あるので、むしろ読む方には続け方に目を向けてほしい。今回のログは、そのための材料です。
うまくいかなかったこと — 失敗2つ
ログには失敗も残っています。2つ、書いておきます。
失敗1 — 層1の更新を先送りにした。価格改定の案内を受け取ったのに、層1の価格表を直さないまま案件を1本流しました。出てきた6枚目の条件は、改定前の旧価格で組まれていました。見積の金額と見比べて初めて気づいた——AIは渡した層1のとおりにしか書かないので、層1が古ければ、提案書も古い。道具は更新しないと嘘をつきます。以来、改定の案内が来たらその日のうちに15分で層1を更新しています。
失敗2 — 記録そのものを忘れた。「1行だけ」のはずが、最初のうちは3日ほど空白ができました。ただ、空白も記録です。続いていない期間が見えることで、次の自分が「何が続かないか」を知れる。だからいまは所要時間だけに絞っています。数字の精度より、継続が先です。
途中で変えたこと — 2つ
失敗を踏まえて、運用で2つ変えました。
変えた1 — 層1の更新タイミング。第7回では「半年に1回、15分の見直し」と書きましたが、失敗1を受けて「価格改定や決算期の実績確定の案内が来たら、その日のうちに」に短縮しました。層1は500字なので15分で足ります。「後でやろう」は第5回(提案書を「書く」から「直す」へ)の失敗と同じ穴です。
変えた2 — フォローの仕分け回数。第6回では「週1回、月曜に貼る」と書きました。私自身の運用では、案件が第6回で書いた20〜30件に近い時期は、月曜の仕分けが金曜には古くなっていました。そこで、そういう期間は月曜と木曜の2回に増やしています。案件数が少ない週は月曜1回に戻すので、回数は案件数に合わせて調整するのが実際的です。
ログに数字として現れない効き目
最後に、数字にならない変化を1つだけ書きます。判断の起点が、記憶から記録に移ったこと。第6回の案件カードを並べる仕組みを回していると、今週どの案件に触ったかが一目で見える。思い出して動くのではなく、並びを見て動く。第6回で書いた「記憶という引き出しは、中身が増えるほど取り出しにくくなる」は、並びを見て動くかぎり起きません。時間短縮はログに数字として残りますが、この「思い出す仕事が消えた」ことのほうが、体感としてはずっと大きい。任せる前に判断するのではなく、任せたから判断できるようになる——この順序の逆転こそ、運用を続けて実感した最大の変化です。
情報の取り扱い — 線は変わらない
このログでも、情報の取り扱いの線は変わりません。他社から受けた見積の内容や、先方が「社内だけで」と言った話は、AIに渡す材料にしません。第5回・第7回と同じ線です。自動化を進めても、守秘の線は入力側で引くのが確実です。
今日やること
- 4領域の道具を、今の業務に1つ当てはめる(5分)— どの領域から始めるかは、第2回の順番表がそのまま使えます
- 記録を1行だけ始める(2分)— 「この作業、AIに任せて何分かかったか」。精度より継続です
- 続かなかった日も、そのまま残す(1分)— 空白も記録です。次の自分が読むものです
次回から
8回で、書籍4領域の道具が一通り揃いました。次回からは、この連載をもう一段掘り下げます。まずは「集めたリストのその先」——50社集めたあと、どこからアプローチするかを数字で決める、リストの精査の話です。
この連載は書籍『営業の仕事をAIに任せろ — 見込み客リストから提案書まで、1人で回す営業自動化』の内容をもとに、加筆して公開します。
書籍の詳細と無料特典はこちら → 営業の仕事をAIに任せろ|速水拓真
Amazonで見る(Kindle ¥1,650・読み放題対応)