計器を週次の改善ループに接続する — 「要対応」が出たとき、どの段をどう直すか
私は営業15年目の速水拓真です。前回(第19回)は、発掘KPIという計器の設計をしました。プール在庫・接触・アポの3段漏斗と2つの率、3つのライン。そして道具26が月曜の朝に「要対応」とだけ出すところまでを作りました。
「要対応」という1語が出たとき、あなたの翌月はそこで止まるか、動き続けるかが決まります。何を直せばいいか分からなければ、計器は1ヶ月で飾りになります。今回は、その「要対応」を、どの段の、何を、どう直すかの判断まで自動で持ってくる仕組みを作ります。計器を、改善ループに接続する話です。
前回までで、計器の針(数字)は毎週見えるようになりました。しかし「針が振り切れたら何をするか」までは、まだ書いていません。針が振れても、直すべき段と直し方が分からなければ、人は2通りに壊れます。全部を一度に直し始めるか、何も直さず眺めるか。どちらも計器のある月を無駄にします。直すのは常に1個。それを機械的に決めるのが、今回の道具です。
集計は3週で必ず死ぬ — 死因は根性ではなく置き場
まず正直な話をします。週次で数字を追う意味は誰でも分かっています。それでも、ほとんどの営業は3週でやめます。順番は決まっています。1週目は正確。全件を目で数え、表を埋め、小さな達成感を得ます。2週目は面倒。数える対象が増え、15分が30分になります。3週目は捏造。「先週とだいたい同じだから」と、数えずに書きます。4週目から、その表は誰も信用せず、存在しないのと同じになります。
私自身、チームの数字管理を任されていた頃にこれをやりました。金曜の夕方に全員の送信済みフォルダを回って表を作り、3週で挫折しました。壊れたのは根性ではありません。集計という仕事を、人間に任せた設計が悪かったのです。
壊れる原因は置き場です。数字が送信済みフォルダ、頭の中、カレンダー、紙のメモに散らばっているうちは、人間は毎週それを集めきれません。逆に、数字が決まった3つの場所にだけあるなら、人間の仕事は「置く」だけです。数える、足す、割る、並べる、前週と比べる。この5つは全部AIの仕事です。
週次ファネルレポートの正体は、この分担の切り替えです。あなたは金曜の夕方に貼り付け3回。あとは5行の表と判定文が届きます。手で月末の集計をすれば2時間、4週分のトレンド表を作れば半日消えます。その時間を毎週返します。
レポートは5行でいい — 置き場は3つに固定する
表の行は、前回のKPI表(プール在庫・接触・アポ)を週単位に刻んだものに、2行足した5行です。
- プール在庫(週末時点):確度「高」かつ未接触の件数
- 新規発掘:その週に発掘バッチでプールに追加した件数
- 初回接触:初回のみ。フォローと紹介依頼は数えない
- アポ獲得:日程が確定した初回アポのみ。2回目以降の商談は含めない
- 接触→アポ転換率:アポ獲得÷初回接触×100(%)
前回の表は月間の数字でした。週に刻む理由は、発覚の速さです。月末に接触が足りないと分かっても、巻き返す日はもうありません。週次なら同じ間違いに3週早く気づきます。月次の管理がなくなるわけではありません。月の数字は、週の表4枚を足すだけで出ます。
数字の置き場は3つに固定します。
- ①プールのシート:発掘バッチの出力を貯める1枚のシート。確度「高」で未接触の見込み客だけを残します
- ②接触ログ:日付・宛先・結果の3列。送った瞬間に1行加えるのが理想ですが、週1回のまとめ拾いでも回ります
- ③カレンダー:アポの予定そのもの
②のまとめ拾いには検索を使います。Gmailなら検索窓に「in:sent after:2026/9/21 before:2026/9/25」(年/月/日の形式。日付は該当週に読み替えてください)。Outlookなら「sent:this week」で今週の送信済みが出ます。ここから初回接触だけを3列に並べてコピーすれば、接触ログの完成です。
③には先に仕込みを1つしておきます。アポの件名の頭に「初回」を付けるルールです。「初回▲▲商事 田中様」のように書いておくと、カレンダーの検索窓に「初回」と打つだけで週のアポ一覧が抽出できます。2回目以降の商談は件名を変えるだけで、集計から自然に外れます。
なお、週の区切りはレポートを走らせる金曜の16時と決めておきます。それ以降の送信は翌週に数えます。区切りがぶれない限り、前週比の意味もぶれません。
道具27: 週次ファネルレポート生成
以下をコピーしてチャットAIに貼るだけの道具です。計算の中身は黒箱で結構です。理解して使う必要はなく、出力が読めれば道具としては十分です。第1作から一貫した立場です。
あなたは法人営業の週次レポート作成担当です。次の4つのデータから、指定の形式で週次ファネルレポートを作ってください。数字はすべてデータから正確に数え、計算してください。データにない数字は作らないこと。
【前週のレポート】(初めての週は「初回」とだけ書く)
(ここに貼る)
【プールのシート】(確度「高」かつ未接触の見込み客リスト。行数を数えること)
(ここに貼る)
【今週の接触ログ】(日付・宛先・結果の3列。初回接触のみ)
(ここに貼る)
【今週のアポ一覧】(日程が確定した初回アポのみ)
(ここに貼る)
出力は次の4つを、この順で。
1. 週次サマリ
「項目/今週/前週/増減」の形式で5行。
- プール在庫(週末時点)=プールのシートの行数
- 新規発掘=今週のプール在庫-前週のプール在庫+今週の初回接触(在庫の消込があれば【補足】で伝えるので、その分を足す)
- 初回接触=接触ログの行数
- アポ獲得=アポ一覧の行数
- 接触→アポ転換率=アポ獲得÷初回接触×100(小数第1位まで、単位は%)
増減には必ず+か-を付ける。前週のレポートが「初回」の週は、前週と増減の欄に「―」を入れる。
2. 崩れパターンの判定
次の順で1つだけ選び、根拠を1文で添える。
- 在庫切れ型:プール在庫が、直近の週間初回接触数の平均(4週分なければある分の平均)×2未満
- 接触停滞型:初回接触が前週比で30%以上の減
- 転換低下型:転換率が【転換ライン】%未満が2週連続(前週のレポートの出力2で「転換低下型」と出ていれば2週連続とみなす)
- 該当なし→「正常」
3. 来週の推奨を1行。
- 在庫切れ型→「発掘バッチを週1回から週2回へ」
- 接触停滞型→「来週のカレンダーに接触ブロック30分×5を入れる」
- 転換低下型→「今週アポに至った接触だけを抜き出し、アポに至らなかった接触と比べて共通点と相違点を3つ挙げる」
- 正常→「現状維持。来週も同じ投入量」
4. 前週の推奨と今週の結果の勝敗。
「推奨:◯◯/結果:◯◯/判定:当たった または 外れた」の1行。推奨が狙った数字に実際に効いたかどうかで判定する。前週のレポートが「初回」なら「判定不能(2週目から開始)」。
保存するときに【転換ライン】を「1」に書き換えておきます。前回、仮置きした1%のことです。4週分のデータが溜まったら、後述の方法で実測ベースに更新します。
入力は4箇所、2週目からは実質3回
貼り付けは4箇所ですが、2週目からは実質3回です。メモアプリに「週次レポート」という固定ページを1つ作り、毎週の出力をそこに追記していくと、【前週のレポート】の欄にはページの直近1週分を丸ごと貼るだけで済みます。前週の数字も推奨も勝敗も、自分のメモが覚えていてくれます。毎週新しく用意するのは「今週生まれた3つのデータ」だけ。これが「数字が自動で並ぶ」の正体です。
なお、プールが数百行に育って貼り付けが重くなったら、【プールのシート】の欄は行数だけを書いて渡して構いません。
出力の読み方 — 崩れは3パターンしかない
ファネルは上から水が流れる器です。壊れ方は「源が枯れる」「流れが止まる」「器が漏れる」の3つしかありません。前回、道具26が「要対応」とだけ出していた内訳を、この3つに割り振ったのが道具27の判定です。
在庫切れ型(源が枯れる)。在庫ラインを「平均接触×2」の2週分に置くのは、発掘バッチを回してからプールに水が届くまで1〜2週のラグがあるからです。処方は回数を増やすだけの1行ですが、原因は2通りあります。単純に回すのを忘れていたケースは、増やせば即回復します。回しているのに新規発掘が2週続けて伸びないなら、回数ではなく発掘条件(業種・地域・規模など)を1つ変える番です。
接触停滞型(流れが止まる)。在庫はたっぷりあるのに、初回接触が前週比マイナス30%以上。原因はたいてい既存案件の炎上か月末の社内業務です。理由の分析は要りません。接触数は「やったか、やらなかったか」にほぼ100%支配される数字だからです。処方のカレンダーへの30分×5ブロック投入が先で、理由はブロックの中で考えるくらいでちょうどいい。
転換低下型(器が漏れている)。数は動いているのにアポが出ない。原因の候補は3つです。文面が外れている、プールの中身が薄い(確度「高」の定義が緩んでいる)、曜日や時間帯が悪い。処方の「当たった接触の共通点3つ」は、アポに至った3件と至らなかった35件を並べれば違いが1つに絞られる、という読み方です。見つけた違いは1週につき1個だけ直します。2つ同時に直すと、何が効いたか分からないまま1ヶ月が消えます。
単週の低下は追わない。転換率は1週の分母が小さいので、アポ1件で数%動きます。さらに初回接触からアポ確定までは1〜3週ズレることが多く、当週の転換率はどうしてもぼやけて見えます。「2週連続でライン未満」という判定条件は、このノイズを吸収するためのものです。1週だけ悪い週に飛びついて文面を全部書き換えるのは、このレポートを導入したら最初にやめることです。なお、複数のパターンが重なる週ほど直すのは1個です。プロンプトの判定が番号の若い方を1つだけ選ぶ設計なのは、効いた原因を1つずつ残すためです。
改善ループの回し方 — 勝敗を溜めて、ラインを育てる
出力4番の勝敗を読み流すだけでは、まだ改善ループとは言えません。外れた週には、そのときの自分の判断を1文で書き添えます。「在庫はまだあると思った(ラインの計算をしていなかった)」「月末は無理と決め込んだ(実際はブロックが2つ入った)」。8週分が揃うと、外し方にパターンが出ます。道具の推奨は数字しか見ません。人間は「今月は」「自分の場合は」で数字を無視した判断をしがちです。勝敗の記録は、その癖を映す鏡です。
当たった比率が8週で6割を超えたら、推奨には原則従う運用に切り替えます。外れが続く場合は、まず出力4番の結果欄で「推奨どおりにやったか」を確認します。やっても効かないなら処方の強度を上げます。接触ブロック30分×5で接触が戻らないなら×7へ、といった具合です。
転換ラインも、1%の仮置きのままでいる必要はありません。4週分の転換率が溜まったら、中央値の半分を実働ラインにします。たとえば4週が「3.1/5.7/7.9/4.1」なら、中央値は4.9%(真ん中2つの平均)、ラインは2.4%。半分に置くのは、警報が出たときは「たまたま」ではなく構造の問題として扱う、という水準の宣言だからです。中央値そのものに置くと半分の週で警報が出て、逆に誰も見なくなります。以降は6週ごとに見直します。
月次レポートは作りません。固定ページに4週分が縦に並ぶので、月初はスクロールして読むだけです。上司や経営会議に出すなら、4週の表を1枚に貼り合わせたものがそのまま月次資料になります。月末にExcelと格闘する2時間が消えます。
マネージャーはさらに楽になります。メンバー各自が金曜に出力1番の表だけをチームのチャットに貼る運用にします。10人チームなら10枚の5行表。集計はゼロで、月曜の朝会は「接触停滞型が2人、在庫切れ型が1人」と指すだけです。勝敗の1行は各自のページに残るので、面談では「外れた週に書いたこの1文」を読んでもらうと、コーチングが数字と癖の両方に立きます。
今日やること
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「週次レポート」の固定ページを作り、道具27を保存する(10分)。 メモアプリにページを1つ作り、道具27のプロンプトをそのまま貼り、【転換ライン】を「1」に書き換えて保存します。前回のKPI表の数字が残っているなら、その3行をページの下部に移しておきます。【前週のレポート】の欄には「初回」と書いておきます。
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初回のレポートを走らせる(15分)。 4箇所に貼って実行します。プールのシートは全選択で貼って構いません。行数はAIが数えます。初回の週だけは、AIが数えた初回接触の行数を、送信済みフォルダの検索件数と突き合わせてください。1回一致したら、以降は黒箱のまま使い切ります。出力は固定ページに追記し、判定が「正常」以外なら、出力3番の1行をそのまま来週のカレンダーに予定として入れます。
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金曜の15分を予約する(5分)。 「週次レポート(15分)」の定期予定を金曜の16:00に入れます。週の締め処理の直後が良いタイミングです。あわせて、次にアポをカレンダーに入れる瞬間から、件名の頭に「初回」を付けるルールを開始します。この2つが、来週から数字が自動で並ぶ土台です。
この連載では、見込み客を発掘し、リストを仕込み、初回メールを送り、アポを積み、失注から次を拾う、一連の回し方を毎回1つずつ道具にしてきました。まずはこの週次レポートで「毎週金曜に数字と判定が並ぶ状態」を作ってください。その上で、初回メールの文面(第17回)と紹介の導線(第18回を改めて確認して、レポートの判定に応じて直すのは常に1個。次回は、この週次ループを1ヶ月回したときに見えてくる「発掘・接触・アポ転換のどの段に自分の強みと弱みがあるか」の読み方を書きます。
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