落とした行を、捨てなかったらリストが正直になった話
2026年。私はAIにリストを作らせる仕事を続けている。500社の候補が1時間で並ぶ。その中から今日電話をかける10社を、点数の順に選ぶ。この仕組みはもう壊れていない。
ただ、最近変わったのは選び方の側じゃない。落とした行の保存の仕方だ。
落とした行は、「消えた」のではなく「置き去り」だった
前の月のことを思い出す。8月末に仕上げたリストは500社。9月の最初の商談のために拾ったのは10社。ということは、少なくとも490社はそのまま捨てた。
正確には捨てていた。スプレッドシートの下のほうに残してはいたが、ソートをかけ直すたびに順番が崩れ、フィルタを書き換えるたびに「除外」として扱われ、やがて上から見ても下から見ても誰のものでもない行になっていた。行はある。参照はゼロ。
スクリーニングで落とした行が、あとで役に立つことなんてない。そう思い込んでいた時期が、私にもありました。
10月1日、落とした行の人数を数えると、数字が合わなかった
10月1日、9月の振り返りをAIに頼んだ。聞いた質問はこれだ。
「9月にスクリーニングで落とした行だけを抜き出して。件数と、あとで拾った行の数を教えて」
返ってきた数字がこうだ。9月に落とした行、490行。そのうち、月の後半で条件を変えてもう一度拾われた行、31行。
490行のうち31行。約6%を、私は同じ月の後半でもう一度必要としていた。
ここで初めて分かった。捨てたつもりの行は、捨てられていなかった。私の記憶の中でだけ、捨てられていた。
落とした行の3類型
31行の中身をAIに要約させた。全部で3通りのパターンがあった。
1つ目は、時期待ち。決算の翌月を見ていた会社は、9月末を待たない。10月に入ると、急に「話を聞こう」という連絡が来る。「検討します」のあとに日付が見えなかった行ほど、日付が付いて戻ってきた。
2つ目は、条件待ち。「従業員300人以上」という一行に合わなかった会社が、9月末で採用が終わる。採用の終わった会社は、いま空いている。先に採用を出していた会社の方が、いま疲れている。
3つ目は、間違い待ち。私が書いた一行の根拠(ホームページの製造という3文字)が、実は古かった。「製造」と「製造業」は違う。「東京」と「港区」は違う。
つまり、落とした行のうち6%は、私が落とすつもりで落としていなかった。条件の書き方が、先の手を縛っていた。
同僚にこの話をしたら、一言返された。「それ、消したんじゃなくて、置き去りにしただけだよね」。図星だった。消すなら記録も消える。置き去りなら、行だけが残って、理由が消える。理由が消えた行は、読み返しようがない。リストから落ちたのではなく、意味から落ちていた。
置き去りの行には、理由の1行を置くことにした
10月2日から、運用を1つだけ足した。
10月2日から、運用を1つだけ足した。リストを3枚に分ける。
A枚(今日・明日):10社。連絡する。
B枚(今月・来月):90社。シグナルが動いたら拾う。第21回で書いた会社の「動き」を読む列を、ここだけで使う。
C枚(保存):残り400行。連絡はないが、消さない。
この3枚でリストが動く。AIへの指示はこうなった。
「落とした理由を1行、各行に必ず書け(時期待ち/条件待ち/間違い待ちの3種でよい)」
書かなければ、行は次の月に戻せない。書けば、来月の初週に「C枚のうち、時期待ちの行だけを日付順に見せて」とAIに頼むだけで済む。
「落とした」を「読み方を変える」に変える
この運用を始めてから、落とした行を読む目が変わった。
以前の私:「外れ」→ 消す(400行を置き去りにする)
いまの私:「外れ」→ 保存 + 理由の1行(時期待ち / 条件待ち / 間違い待ちの3分類)
3分類で足りる理由は、外す理由は会社ごとに違うのに、戻ってくる理由は3通りに尽きるからです。
任せる線:AIは仕分けと並べ替え、私は基準と一言
この仕組みを回してみて、任せる線がはっきりした。
AIに任せられる:500社の理由の1行書き(3分類でよい)/時期順の並べ替え/「C枚の時期待ちを日付順に」
私がやるべき:3分類の基準を決める/「落とした行を消さない」と決める/C枚の保存先を自分の管理に置く
以前の私が失敗したのは、仕分けを面倒がって、捨てることを選んだからじゃない。捨てた行を、捨てた行として読み返す仕組みを、作っていなかったからだ。仕分けそのものは、AIのほうが速くて正確です。
いまのリストは、私の記憶に合わせて書き換わる
いま使っているリストは、AIが毎週出してくれる。出てくるたびに、私の記憶と違う点がでる。違う点を、私は毎週1行、AIに戻す。
「先週、落とした行を保存していたから、それを引き取って」
「C枚の時期待ちのうち、10月後半に動きそうな行だけ残して」
そうして毎週1行、AIに渡す指示を足す。1行足すたびに、リストは少し、私の読み方に近づく。
1年後、リストは私の記憶の複製になる。そうなれば、探す仕事はAI、読み替える仕事は私、という分け方がはっきりする。
今週、ひとつだけ試すなら
① 先月、スクリーニングで落とした行をAIに抜き出させ、件数だけ数える(2分)
② その中に「あとで拾い直した行がないか」をAIに聞く(3分)
③ あれば、その行を3分類(時期待ち/条件待ち/間違い待ち)に仕分けさせ、それぞれの数を聞く(3分)
④ 落とした理由の1行を、リストの端の列に足す指示を出す(2分)
500社を捨てる前に、31行だけ拾い直す。それだけで、リストは正直になる。
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それでは、また。
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