点数が1位の会社から、返事が1通も来なかった話
こんにちは。速水拓真です。
リストに点数が付くようになってから、いちばん最初に起きたのがこの失敗です。AIが作ってくれたリストの、点数1位の会社。私はそこに、3か月で6通メールを送りました。返事はゼロでした。
同じリストの42位の会社には、プレスリリースを見つけて、その一文を引用した1通を送りました。当日中に返事が来て、翌週には面談が決まっていました。
点数は正しかったのです。1位の会社は、うちの製品を導入するのに最も適した会社でした。業種も、規模も、事業の領域も。それでも3か月、返事が1通も来なかった。理由は単純で、その会社はその3か月、何も動いていなかった。
今日は、この「点数の抜け」の話をします。
会社は、動いているときにしか買わない
まず、あたりまえのことをあたりまえに書きます。会社は、動いているときにしか買いません。
人が増える。拠点が増える。事業が増える。組織が変わる。会社が動いたぶんだけ、いままでの仕組みでは足りなくなる。そして増収計画のように「すでに決まった計画」が背後にあるので、その不足は放置できません。だから発注が起きます。
逆に、安定している会社に提案をしても、返ってくるのは「現状で問題ない」の一言です。断る理由は無限に作れるので、向こうは断りやすい。動いていない会社は、提案が下手だから落ちないのではなく、単純に買わないのです。
営業を長くやっていると、「課題がありそうな会社」を追いがちになります。苦しそうな会社です。でも苦しそうな会社は、予算を締めて、外注を止めて、まず何も買いません。買うのは、忙しくて手が回っていない会社です。
苦しそうな会社より、忙しそうな会社を追う。私はこの順番に気づくのに、20年かかりました。
点数は「顔」を掴む。シグナルは「動き」を読む
では、なぜ点数1位の会社は返事をくれなかったのか。
点数付けをAIに任せたとき、私は何を測らせていたかというと、業種と規模と事業領域でした。相手の会社が、うちの製品と適合しているか。これは「顔」を掴む仕事です。顔は、適合度を教えてくれます。
でも顔は、動きを教えてくれません。いまこの会社で何が起きているか。誰かが増えているのか。何かが始まっているのか。点数92は「買うとしたらうちの製品」とは言ってくれても、「いま買う」までは言ってくれないのです。
この抜けを埋めるのが、購買シグナルです。動いている会社は、必ず外に痕跡を残します。組織が動けば人事に、お金が動けば投資に、事業が動けばプレスリリースに。この3つの窓です。
シグナルは、ニュースそのものではない
ここで、いちばん誤解されやすいことを書きます。購買シグナルとは、ニュースそのものではありません。
「DX担当を採用」というニュースを見たとします。この事実は、誰でも見られます。価値を作るのは、その読み替えです。何も持たずに着任する担当者は、着任して90日以内に成果を出す仕組みを必要としている。この読み替えの結果が、シグナルです。
つまり、ニュースを収集するだけなら、AIに任せても何も起きません。読み替え方を私が持っていて、それを条件としてAIに渡す。初めて「いつ、誰に」が決まる。
数字を出します。ある春、私が送った、シグナルなしの新規開拓メール400通への返信は5通でした。同じ期間、リストの中で動きが確認できた40社にだけ、シグナルの1行を添えて送ると、返信は5通でした。
返事の総数は同じ5通です。でも労力は、400通と40通です。文面はほとんど変えていません。変えたのは、動いている会社にだけ送ったということだけです。
窓は3つある。開いているのに、読まれない
人事、投資、プレス。この3つの窓は、誰にでも開いています。開いているのに読まれない理由は2つあります。
1つは、営業のスケジュールから、ニュースを見る時間が消えていること。もう1つは、読み替え方を、誰にも習ったことがないこと。
私はこの2つを分けて直しました。読み替えは人間の仕事です。私が読み方を決めて、条件に落とす。見張りはAIの仕事です。毎朝、リストの会社の名前で、3つの窓を監視させて、動きがあった会社だけを朝のうちに知らせる。
20年目で、いちばん変わったのはここです。昔の私は、動きを見る時間そのものを持っていませんでした。いまの私は、見る時間はゼロで、読む時間だけを持っています。読むのは、動きがあった10行だけです。
今週、ひとつだけ試すなら
リストを持っているなら、その中で「いま動いている会社」を3社だけ選んでください。求人を3件出している会社。プレスリリースがここ2か月に2本出ている会社。役員が変わった会社。それで構いません。
その3社にだけ、動きを引用した1行を冒頭に足して、メールを送ってみてください。ほかの40社には送らなくていいです。
返事が来るのは、文面が上手いからではなく、相手がいま買いのときだからです。点数は顔を、シグナルは動きを見る。この2つが揃って、はじめて「誰に、いつ」が決まります。20年間、私は「誰に」しか見ていませんでした。「いつ」を見た途端、送る数は10分の1になりました。
書籍『見込み客をAIに探させろ — 空リストに悩む営業のための、顧客発掘の完全自動化』(速水拓真)では、人事・投資・プレスの3つの窓の読み替え方と、毎朝の見張りをAIに任せる作り方まで、リストが「動く」までの工程を通しで解説しています。
それでは、また。
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