商談の翌朝、送ったお礼メールの返信率が半分だった話
こんにちは。速水拓真です。
前回は、商談の前夜22時に10分だけのブリーフを組み立てて、翌朝の30分を奪い返す話でした。今週はその商談が終わったあとの話です。商談が終わった直後に送るお礼メール。あれを私は20年、毎回書いてきました。それなのに、返信が来るのは半分ぐらいの話です。返信率を上げようとして、文章を磨いていた時期の話を書きます。
お礼メールの返信率は、文章の上手さで決まっていない
20年間、「お礼メールは上手に書くもの」だと思っていました。
上手に書くとは、丁寧なことです。ご多忙の中、貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。本日の御社のお話の中で、特に〇〇の部分に深く共感いたしました。……そんな文面を、若い頃は夜遅くまで推敲していました。商談が終わって帰社し、返信が来るかどうかを気にしながら、30分かけてお礼メールを書く。
結果はどうだったか。送った本数に対して、返事が来るのは半分弱でした。下手な書き方の同僚と返信率は変わりませんでした。上手に書けば書くほど、丁寧さが先方に届く代わりに、私の夜が消えていくだけでした。
直後に届いたメールだけが、商談の続きとして読まれる
転機は、AIに任せるようになってから気づいた、時間の話でした。
先方が商談室を出て、廊下を歩き、自席に戻り、PCのロックを解除するまでの時間。あれは5分前後です。私は商談が終わってから数時間後に、社に戻って「ご多忙の中」と書いていた。そのころ、先方の商談の記憶はもう薄れ始めています。
商談終了の5分以内に先方に届いたお礼メールは、お礼としてではなく、商談の続きの最後の1枚として読まれます。席に着いた先方は、届いたメールを読みながら商談をもう一度思い出す。記憶は取り出すたびに定着するので、話した数字が先方の頭にもう一度刻まれます。一方、翌朝に届いたお礼メールは、用件のない別のメールとして受信箱に置かれます。
返信率が半分だった理由は、文章の上手さではありませんでした。届くまでの時間でした。
書けなくても送れてしまう仕組みがある
ここまで読むと「分かっている、でも5分以内なんて書けない」となる話です。私も20年そうでした。商談直後に送れない理由は、怠けでも文才でもなく、何を書けばいいかが決まっていないからです。
書くことが決まっていない文章は、書き出しの1行目で止まります。止まった文章を仕上げるのに15分かかる。15分かける文章だから、あとでまとめて書こうになる。そして、書かれない。
だから私は、AIにこう頼むことにしました。商談中に取る汚いメモをそのまま貼って、「お礼メール1通を作れ。ただし、メモにない事実は書くな。5文以内だ」と。
返ってくるのは200字前後の文です。1文目がお礼。2文目が、先方が商談で言った数字を使った内容の確認。「在庫集計に月40時間ほど、とのこと承知しました」。3文目が、こちらが約束したこと。最後の文が、日付付きの次のアクション1つ。
そして読み直しは3分で済みます。見る箇所は3つだけです。
1つ目は表記。社名、部署、役職、氏名。役職の部長と課長の取り違えは致命傷です。2つ目は数字。先方の言い方が「40時間くらいかな」という曖昧なものだったなら、勝手に断定形に直されています。直すときは「ほど」を残します。先方の発言を超えた数字は、事実として先方に突き返されてしまうからです。
3つ目が、いちばん重要です。約束が増えていないか。私は商談で「事例を確認しておきます」と言っていないのに、AIが文を滑らかにする過程で「同規模の事例を確認のうえ」という約束を1行、勝手に作っていました。メモにない約束が1つ増えるだけで、次の商談は約束を果たせなかった私から始まります。読み直しで約束の行に印をつけて、言っていない約束は消す。これで5分の内訳がほぼ決まるのです。メモを貼って1分、生成を待つ30秒、読み直し2分、送付1分。
返信が来ないお礼メールに、共通の欠けている文があった
運用を始めてしばらく、私は過去3か月に送ったお礼メールを開いて、返信の来たものと来ないものを並べました。
来たメールに共通していたのは、最後の文です。「次回、3月21日の14時にうかがいます」と、日付の入った行で終わっています。来なかったメールは、「ご検討のほど、よろしくお願いいたします」や「まずは御礼まで」で終わっていました。
「ご検討のほど」は、先方に返信する理由がどこにもない行です。返信の必要のないメールは、読まれても案件が動きません。また、返信が来なかった商談には、もう一つ共通点があったことに気づきます。商談中に答えられなかった質問が、そのまま宙に浮いていたのです。
「導入にどれくらいかかりますか」。この質問にその場で答えられなかったなら、お礼メールで「3月21日の訪問時にお答えします」と書く。これだけで、未回答の質問が、回答予定の質問に変わります。先方の受信箱から「聞いたのに答えてもらえなかった」行が消え、私の次回の議題が1つ、メールの時点で固定されます。お礼のメールが、次の商談を予約してくるようになるのです。
任せる線は、どこにあるのか
商談から5分以内に、200字前後の原稿を組み立てる。ここまではAIに任せます。私は汚いメモを貼るだけです。
しかし、表記と数字と約束を読み直す3分は、人間です。特に約束。AIが約束を作り、私がそれに印をつける。印の基準があるのは、その商談室に席を立てた私だけです。
そして、次のアクションにどの日付を置くか。これは読み直しより重い仕事です。「来週」ではなく「3月21日の14時」まで落とさないと、相手は返信で日付を1往復します。日付を1往復させないための思考は、AIの外です。AIは商談の続きの1枚を書く。商談を先に動かす約束の1文が通るかどうかは、商談室にいた私にある。 私がたどり着いた線はそこです。
今週、ひとつだけ試すなら
今日は、お礼1通で試せる話を書きました。
まず、過去3か月に送ったお礼メールを1通開いてください。最後の文が、日付の入った行で終わっているかだけを見てください。もし「ご検討のほど」や「まずは御礼まで」で終わっていたら、その案件の明日は自分から動きます。
次の商談が終わったときは、会議室を出た瞬間にスマホのメモにこの5行だけ書いてきてください。日時と役職、先方が言った数字、先方の未回答の質問に◎、こちらが約束したこと、次のアクション。そのメモをAIに貼って、5文以内とだけ伝えてください。200字ぐらいのメールが帰ってきます。あなたがするのは、約束の1行を探すことと、言っていない約束を消すことです。
返信率は、上手さで上げるのではなく、届く時間と、最後の1行で上げます。私の返信率は現在、半分から7割ほどまで戻りました。文は前より素っ気なくなっています。
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