速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

「完全自動化」への足は残った手の数から — 月次点検を道具で繋ぐ判断線の引き方

初出: Zenn

任せ表の月次点検が回るようになりました(任せ表は月次の数字で点検する)。点検を始めると、ある種のごまかしが見えます。任せ表はAIに任せる工程の線を引いたのに、点検と報告は自分が毎月手で回している——これで問題ないと言いたいところですが、完全自動化への判断を先送りし続けている形です。

この記事では、点検を回す人間の工程を棚卸しし、「道具で繋ぐ」部分と「手を残す」部分を分ける判断線を引きます。書籍の導入編では道具の基盤を「月1万円以内」に置いていますが、ここまでの連載で道具費はほぼゼロです。だから予算は残った手を繋ぐ道具に全部使える状態にあります。

点検を回す人間の工程 — 4工程30分の内訳

每月回しているのは、次の4工程です。

工程 内容 所要 性質
①集める 終業時3行メモから月末の数字を集める 10分 事実の転記
②出す 点検プロンプトに表を貼って判定を出させる 3分 実行
③選ぶ 更新候補を採用・不採用に分ける 5分 判断
④整える 報告1枚(月次)と総点検の表に整える 12分 事実の整形

内訳を見ると、①②④は工程単位で任せられる3条件(入力が手元にある・正誤がすぐ分かる・ダメージが軽い)を満たしているのに手でやっています。③だけが判断で、これは手を残す2か所の1つ目として固定済みです。つまり残すべきは③を含めて最大3か所の「人が点検する」行為で、①②④は道具で繋げてよい。

プロンプト本体 — ①集める工程の棚卸し

まず、自分の手が何をしているかをAIに数えさせるのが第1歩です。点検の直後(数字が手元にある状態)で実行します。

次の「点検で人がやった作業メモ」を読んで、工程4種(集める/出す/選ぶ/整える)に分類してください:

1. 作業メモは行単位で「工程・人間がしたこと・事実転記か判断か・機械化の正誤判定のしやすさ」を1行ずつ出す
2. 事実転記のみの行に印を付ける(判断が入った行は「手」のまま)
3. 最後に、事実転記だけで完結する工程名をリストする(これが道具で繋げる候補)

出力はこう返ります。

- 3行メモから週次集計へ転記: ①集める・事実転記・日付で照合できる → 繋げる候補
- Googleフォームの回答を月次表へ転記: ①集める・事実転記・回答IDで照合できる → 繋げる候補
- 点検プロンプト実行と貼り付け: ②出す・実行・出力の有無で判定できる → 繋げる候補
- 更新候補の採用・不採用: ③選ぶ・判断 → 手を残す
- 3行の数字を報告の表へ整える: ④整える・事実転記・先月値と突き合わせられる → 繋げる候補
事実転記だけで完結する工程: ①集める、②出す、④整える

ここで大事なのは、AIの出力を鵜呑みにしない確認を1回挟むことです。転記対象の数字(準備工数・商談数・提案数)が「記録から拾える事実」かどうかは、自分の方がよく知っています。効果測定の3指標には、商談数のように「相手が聞く姿勢を見せた対話だけ数える」という数え方の規律(効果測定は3指標で回す)があります。数え方の定義が曖昧なまま道具に繋ぐと、機械は規律を守れず、全部を数えてしまう。これは見込み客リストの名寄せで学んだ失敗(1ヶ月で腐るのはリストの中身)と同じ構造です。

道具で繋ぐ — 月1万円以内の3本の配線

繋げる候補が固まったら、道具は3本だけ足します。すべて既製品で、合計は月1万円以内に収まります。

配線1: 記録の入口をフォームに寄せる(月0〜数千円)

終業時3行メモは、紙や個人のメモ帳から共有フォームへ移します。入力欄は3行のままで変えません。変えるのは置き場所だけで、回答が行として自動蓄積されます。入口が寄るだけで、①集める工程の「探す・集める」が消えます。

配線2: 集計をスクリプトに任せる(月0円)

フォームの回答表から月末の3指標を集計する式は、1度書けば毎月動きます。AIに式を作らせるときは、計算の仕様を1枚で渡します。「商談数は『聞く姿勢』の対話のみ」「準備工数は15分刻みの自己申告合計」——この定義行をそのまま貼ることが品質の線です。

次の定義行に従って、回答表から月末3指標を集計する式を作ってください:
- 準備工数: 15分刻みの自己申告の合計を商談数で割る(1商談あたり)
- 商談数: 分類列が「対話」の行だけを数える(資料送付のみは対象外)
- 提案数: 提案列に日付が入った行を数える
回答表の列名は次のとおりです: (列名を貼る)

ここで初めてコードが固定の契約になります。式が返す数字の人間側確認は、最初の1か月だけ毎回・2か月目から1点検1回に減らします。正誤の照合相手(回答表の行)が存在するので、任せられる3条件を満たします。

配線3: 報告の骨子を月次テンプレートへ自動投入する(月0円)

月次報告の型(月次の上長報告を1枚に整える)は固定の見た目なので、集計値を型の欄に転記する部分はスクリプトで埋められます。AIに書かせるのは「差1行・変更1つ・来月方針1行」の骨子だけ、と前回決めた規律をここでも守ります。数字の欄はスクリプトが、ことばの欄はAIが、採用は人が——役割が3層に分かれます。

手を残す部分 — 繋げたあとの3行

残る手は3行に縮まります。

  1. 3行メモの入力(毎日2分)——これは記録の入口であり、機械に外注できません。入力を止めると集計も点検も止まるからです
  2. 更新候補の採用判断(月5分)——判断線の規律。理由を自分の言葉で書ける範囲だけ採用します
  3. 最終読み(月5分)——報告1枚と総点検の表を、上長に出す前に自分の目で1回読む。機械が数えた数字が規律どおりに集まっているかは、送る側の責任です

ここまでで、点検回りの手作業は月30分から約12分に減ります。減った分は増し編で決めた余白の使い道(守った余白を商談の質に変える)にそのまま流せます。この判断線が「完全自動化パイプライン」への足踏み位置です——全部を繋げるのではなく、事実の流れを繋ぎ、判断と規律の手を残すのがこの段階の自動化の形です。

検算 — 繋げたあとの1か月

仮定は既存の運用と同じ数字(週7商談・3指標)を使います。

  • 繋げる前: 点検と報告の人間工程 約30分/月+3行メモ毎日2分
  • 繋げたあと: 入力2分(変わらず)+採用5分+最終読み5分=約12分/月
  • 差引: 18分/月。道具費はフォームと集計で月0〜数千円、スクリプトは既存環境で0円

ここに「集める・出す・整える」の機械化の失敗リスクを足すと、最初の1か月は式の確認に1回10分かかります。つまり実質の回収は2か月目からです。月1万円の枠に収まるまで道具を足す必要はなく、この4工程の接続で導入保守の自動化は一段落します。

まとめ

  • 点検を回す手は集める・出す・選ぶ・整えるの4工程30分。うち③だけが判断で固定、①②④は事実の転記
  • 道具は入口・集計・整形の3本の配線で足りる。月1万円以内に収まり、既製品で構わない
  • 規律の定義行を渡さないまま集計を繋ぐと機械が全部数えてしまう——定義行が品質の線
  • 残る手は入力・採用・最終読みの3行12分。これが完全自動化への足踏み位置

次回

残った手のうち、商談後24時間のフォローメールを形にする回です。5箱メモの5番の箱「引き金」(商談前準備を5箱のメモにするで決めた相手の言葉の引用)を、そのまま送れる1通に整える型を作ります。この連載の続きは、はてなブログでも毎日書いています。

この記事の元になった書籍では、完全自動化パイプラインへの道を「事実の配線と判断の残置」の設計として扱っています。

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📚 この連載の他の媒体: note(物語編) ・ はてなブログ(実務編・毎日更新)

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