速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
note

10時の商談なのに、9時50分までメールをしていた話

初出: note

【予告】11/1(日)16:00〜11/6(金)16:00の5日間、Kindle本『営業の仕事をAIに任せろ』(速水拓真)が無料で読めます。


▼ Kindle本はこちら(11/1 16:00から5日間無料): https://www.amazon.co.jp/dp/B0HHNXGW2Y


こんにちは。速水拓真です。


前回は、終業前の2分で書く3行の記録の話を書きました。私の表では、商談の行にしばらくゼロが並んでいました。そこへ木曜の朝、1行の返事が届きました。先週見張りを立てていた61位の会社からで、初回の面談が来週に決まったのです。今日は、その商談の準備をどうやって並べるかの話をします。


「御社で、うちの増設に合わせられますか」


15年前の話から始めます。あの頃、10時に初回の面談が入っている日でも、私は9時50分まで社内のメールを片付けていました。残りの10分で相手のWebサイトを眺め、議題も質問も決めないまま会議室に入る。そんな朝の失敗の典型が、食品メーカーの設備課長との初回でした。開口一番、先方からこう来たのです。


「御社の製品で、うちの第2工場の増設に合わせられますか」


増設の発表は、前の週のニュースに出ていました。私は見ていなかった。「持ち帰って確認します」としか言えなかった瞬間、相手の顔から「話を聞く体勢」が消えるのが分かりました。その商談は、次につながる約束のないまま30分で終わりました。準備不足で入った商談は、最初の3分で負け筋がつきます。もう、話し方の問題ではありません。その日、私の手元には話す材料が存在しなかったのです。


準備ができなかった理由は、やる気ではなかった


あの日から私は、毎晩「明日こそ、前日に準備をしておく」と決めるようになりました。続かなかった。朝のデスクには、緊急なものばかりが届きます。先方からの返事、社内の確認、鳴る内線。準備は大事だと分かっているのに、毎朝それらの下に埋もれました。


後で分かったことですが、準備は重要なのに、緊急ではありません。朝の混乱では、緊急のほうが重要を殺します。だから準備ができないのは、やる気がないからではないのです。着手する時刻が決まっていない仕事は、やる気だけでは始められません。20年この仕事をやってきて、やる気の欄に置いたまま回り続けられた仕事を、私は1つも知りません。


目覚まし時計と同じ構造に作り替えた


発想を変えたきっかけは、目覚まし時計でした。誰も「明日こそ早く起きる」と毎晩決意して眠りません。時刻を一度設定しておけば、翌朝は鳴った音に反応するだけです。商談の準備も、これと同じ構造に作り替えられます。自分の判断で始める仕事をやめて、決まった時刻で起動する処理に変えたのです。


そうすると、人間が覚える手順は、たった1つになりました。


人間の仕事は、帰り際の3分だけ


夕方、帰り際の3分。明日の商談を、SFAから手元のメモへ貼ります。案件名、顧客名、相手の役職、時刻、前回の商談の話、いまどこまで進んでいるか。この6点をコピーするだけです。AIは私のSFAを勝手には読めない。だからこの3分だけは、人間の仕事として残してあります。


この3分が点火です。点火を忘れた翌朝は、何も並びません。逆に言えば、人間の仕事はここで終わりです。リストさえ貼ってあれば、あとは決まった時刻に機械が走ります。


朝、机に着く前の8時50分


夜明けには、その日の商談相手の外の情報が届くようにしてあります。ニュース、決算、組織の動き、採用の様子。冒頭の増設のニュースも、この仕掛けなら前の週のうちに私の目に届いていたはずです。


そして朝、机に着く前の8時50分。商談リストと外の情報をAIに渡すと、商談ごとの準備書が並びます。私はそれを10分で読み、直すべきところを3点だけ直す。9時5分には、4件ぶんの準備が終わっています。15年前、下調べと議題と質問の設計に1件25分、4件で100分かけていました。いま人が手を動かすのは、前夜の3分と朝の15分。差の82分は、私が寝ている間と、コーヒーを入れている間に、機械が走った分です。


一番よく効いたのは、準備書の最後の1行だった


準備書は、商談ごとに7項目で並びます。一言のサマリー。相手の今の状況。時間配分つきの議題案。質問3つ。想定反論とその応答。確認する数字と持ち物。そして最後に、出口の定義。この商談が成功と言える状態を、1文で書く欄です。


正直に言うと、前の6項目は読むと助かる程度でした。一番よく効いたのは、最後の1行です。出口の1文があると、商談の終わり方が変わります。初回の面談なら、出口は「次回の日程を決める」。そこが1文で決まっていると、商談は「お話しできました」で終わらなくなります。出口のない準備で入った商談は、終わったあとに「何をしに行ったんだっけ」となる。15年前の私は、準備とは相手を知ることだと思っていました。違いました。出口を1文で決めておくことのほうが、よほど大きい。


いま私の準備は、並べることを機械に任せて、読むのは朝の15分だけです。この連載で、商談の前夜にAIと予行演習をする話を書いたことがあります。あの話には前提がありました。朝の時点で、準備書がもう並んでいることです。並ぶものがなければ、練習の台本すら存在しません。


届かない朝は、80点で入る


この仕掛けには、正直な限界が2つあります。第一に、届く情報の確度はまちまちです。だから外の情報は、商談でそのまま話しません。話す前に1分だけ、出典をたどって元の発表を自分の目で確認します。誤った情報を相手の前で口にしたときの失点は、準備しなかったときの比ではありません。あの増設の話を、出所も確かめずに受け売りで話していたら、15年前の失敗が逆再生されていたでしょう。


第二に、機械は毎朝必ず届くとは限りません。届かない朝は、外の情報なしで回します。準備書の相手の状況の欄がやや薄くなるだけで、他は止まりません。自動化とは、止まらないように設計することであって、全部が動くことではないのです。


そして、80点で入ります。80点の準備で入った商談と30点のまま入った商談の差は歴然ですが、80点と95点の差は、結果にほぼ効きません。朝の15分で完璧を狙うと、遅刻の心配だけが増えます。完璧な準備より、並んでいる準備が商談を取ります。


任せる線


並べるのは機械です。何を調べて、何を書くか、その中身の組み立てまで任せています。人間の仕事は3つだけ。帰り際の3分でリストを貼ること。朝の15分で読み直すこと。そして最後の1行の出口に、自分の言葉で手を添えること。15年前の私は、準備をやる気の問題として抱え込んでいました。着手の時刻を持たない仕事を、やる気で回し続けるのは、どんな決意があっても無理です。


今週、ひとつだけ試すなら


来週の商談を、今日の帰り際の3分で手元のメモに貼ってみてください。案件名、顧客名、相手の役職、時刻、前回の話、いまの段階。翌朝、机に着く前にそれをAIに渡して、商談1件ぶんの準備書を作らせる。読み終えたら、最後の「この商談が成功と言える状態」の1行だけ、自分の言葉で直してください。あとは80点で会議室に入る。15年前の私は、9時50分からの10分の準備で初回の商談を失くしました。いま私のメモには、来週の初回面談の6行がもう貼ってあります。点火は、いつでも人間の仕事だからです。


書籍『商談をAIに鍛えさせろ — 事前準備から断られフォローまで、商談の全工程をAIで強化する』(速水拓真)では、帰り際の3分の点火から、朝に並ぶ準備書、当日までの商談の練習まで、貼って動く形でまとめています。Amazonで見る


それでは、また。


🎁 読者特典3点セット(無料)


  • ① 提案書3層プロンプト — 40分で6枚の提案書を出す、貼って動く完全版

  • ② 調査カード3分プロンプト — 1社30分の企業調査を3分に(5社まとめ処理つき)

  • ③ 商談前メモ5箱テンプレート — 商談5分前に読める1枚(AI整形プロンプト+記入例つき)


メールアドレスだけの登録で3点すべてすぐ受け取れます(解除はいつでも)。


→ 読者特典3点セットを受け取る(無料)


> 📗 商談をAIに鍛えさせろ(Amazon・読み放題対象)


>


> 📗 シリーズ全3冊: 営業の仕事をAIに任せろ ・ 見込み客をAIに探させろ ・ 商談をAIに鍛えさせろ


>


> 📚 この連載の他の媒体: Zenn(技術編) ・ はてな(実践編)

営業×AI実践シリーズ 全3作

Kindle Unlimited 読み放題対象 — 追加料金なしで読めます

← 記事一覧へ

← 5箱の状態は月次報告の1行に足す — 積もりと数…保留箱は月1回の見直しで再開か廃止か — 1か月… →