速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
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AIに頼むたびに、同じ説明を書き直していた話

初出: note

こんにちは。速水拓真です。


前回は、商談の前夜22時、10分だけのブリーフを組み立てる話でした。翌朝の30分を奪い返す10分です。その流れの先に、今週はもっと地味な話を置きます。AIとの「やり取り」そのものの話です。私が頼むたびに同じ説明を書き直していたことに気づいた夜の話を書きます。


毎日20分、指示文を書いていた


AIに任せるようになると、まず書くのは指示文です。


調査カードを頼むとき、「この会社の決算短信の要点、直近のプレス、採用ページの募集文から、困っている可能性の高いことを並べて」と頼みます。頼むこと自体は4行です。4行を書くのに1分もかからないはずですが、実際は違いました。


文面は、毎回思い出すところから始まります。先週はどんな書き方でうまくいったか。出典をどこまで求めたか。出力を1枚にするか、3枚にするか。書きながら手が止まって、気づけば20分経っています。AIの仕事は3分で終わるのに、私はその3分の仕事を頼むために、20分かけて指示文を書き直していました。


毎日20分の積み重ねです。1か月にすると、6時間ほど。返信を書く時間も、飛び込みの時間も足りないと言い続けていた私は、指示文の書き直しに、1か月ぶんの6時間を黙って払っていました。


同じ頼み方でも、出来上がりは揺れる


いやなのは、時間の無駄だけではありません。出来上がりが揺れることです。


同じ会社の調査なのに、ある日は「商談で最初に切り出せる質問3つ」まで並べて返ってくる。翌日は出典のURLがなく、数字が根拠のないまま並ぶ。どちらも、「頼み通りにやりました」という文面で返ってきます。


違いは、私の4行の揺れでした。ある日は4行の中に「出典は必ず書くように」と入っていた。翌日は書き忘れた。入っていた日は、それだけで商談に持っていけるカードが返ってきた。書き忘れた日は、商談の前夜に出典を探し始める羽目になりました。


揺れているのは、AIの出来栄えではなく、私の4行でした。それに気づくまで、私は「AIの日は当たり外れがある」と片付けていました。


手順書は、忘れるために書くのではない


転機は、指示文を過去にさかのぼって並べ直した夜です。


1か月ぶんのやり取りを遡って、うまくいった日の指示文だけを一つのファイルに貼り合わせました。すると、同じ文が何度も出てきます。出典は必ず書くように。不明な点は「不明」と書くように。1枚に収めるように。商談で使わない話は入れない。重なった文をつなぐと、10行前後の手順になりました。


その1枚に、私は「明日の私への手順書」という名前を付けました。


このとき気づいたのは、手順書は「忘れないように」書くものではない、ということです。忘れていたことなら、たいした被害はありません。困っていたのは、うまくいった日の判断が、翌日の私に届いていないことでした。手順書とは、昨日の自分が正しかった判断を、今日の私に届けるための仕組みです。 忘れるから書くのではなく、届けるために書くのです。


手順書を渡すと、AIの実力が変わる


翌日から、その手順書を冒頭に貼って頼むようにしました。変化はすぐに出ました。


出典のない数字が並ぶことがなくなった。カードは1枚に収まる。返ってくるまでの3分は同じなのに、返ってくる型が揃う。手直しは数字の確認1箇所だけで、以前の「読み直して書き足して再送」が消えました。


AIは、私の指示文の揺れを忠実に再現していたのです。揺れていたのはAIの実力ではなく入力でした。手順書を固定した途端に「AIの実力が安定した」と見えたのは、実のところ、私の側の揺れが消えただけでした。


もう一つ変わったのは、手順書の育て方です。1回書いて終わりではありません。使ってみて外れた日には、外れた理由を一行ずつ足していきます。「決算の数字は直近の期まで見る」「プレスリリースの裏は採用ページで拾う」。この一行足しが積もって、調べる手順だけでなく、提案書の初稿を頼むときも、同じ1枚が回るようになりました。


任せる線は、どこにあるのか


私がたどり着いた線は、こうです。


調査を実行すること、カードを組み立てること、複数の材料を並べて要約すること。ここまではAIに任せます。指示文を毎回打ち直す仕事は、もうありません。


手順書に一行足すこと、外れた日の原因を書くこと、行き過ぎたら一行削ること。ここは人間です。一行足しの中身は、その日の商談で返ってきた反応の記録です。相手の担当者がどの数字で反応したかは、商談室にいた私にしか見えていません。手順書とは、AIへの指示を置く箱のことです。その箱の一行目が、営業の思想です。


今週、ひとつだけ試すなら


この1週間で、AIに頼んで「これは上手くいった」と感じたやり取りを一件選んでください。その指示文を丸ごと、どこか一つのファイルに貼り付けてください。それが手順書の1行目です。


明日以降は、ゼロから書かずに、そこから書き始めてください。足す一行はひとつだけでいい。足すなら「〜しないで」という書き込みが、いちばん効きます。私の手順書の一行目には、いまも「調べたことを自分の言葉で言い直さない」と書いてあります。


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