速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

任せ表は月次の数字で点検する — 判断線を1枚のチェックリストに戻す更新の型

初出: Zenn

月次報告の型が揃ったので、次は判断線を戻す番です。前回(月次の上長報告を1枚に整える)では、先月比の差1行・変更点1つ・来月方針1行の報告1枚を作りました。この月次報告は、実はもう1つの使い道があります。導入時に引いた「任せ表」を点検するための数字の供給源です。

判断線(任せ表)は、導入の初週に1回引いて終わりになりやすい紙です。1か月運用すると、その時の前提が静かにずれていきます。この記事では、月次報告の3指標と並べて任せ表を点検するチェックリストと、更新をAIに下書きさせるプロンプトを残します。

任せ表は「引いたきり」で失効する — 数字が教える3つのずれ

運用表に記録(あなたが止まっても回る回し方を残す)が回り始めると、任せ表の前提は次の3方向にずれます。

ずれ1: 任せ方が名ばかりになる

「全文任せ」のはずの工程で、出力の書き直しが半分を超える状態です。実測列の読み方(見積もりと実測の差を読む)で扱った停滞工程の容疑1と同じ現象ですが、あちらは「削減が止まった工程」の診断、今回は表全体を毎月なめて回る点検という位置づけです。

ずれ2: 新しい工程が表に載らない

商談5分前の5箱メモ(商談前準備を5箱のメモにする)のように、増し編で途中から始まった工程は、任せ表に1行も載っていないことがあります。運用は回っているのに、判断線だけが古いままです。

ずれ3: 手を残す2か所が流れる

「判断と顧客への1文は人間が持つ」という線(判断線の記事で定義)が、忙しい週に静かに侵食されます。顧客へ送る1文をAIに下書きさせてそのまま送る、判断の3案のうち1案目をそのまま採用する——個々の判断は軽くても、月が変わると「誰も理由を説明できない提案」が溜まります。

点検チェックリスト — 月次報告の数字と並べる5問

点検は5問です。それぞれ、月次報告(3指標の設計)のどの数字を見るかが決まっています。

# 点検の問い 見る数字 緑(線のまま) 赤(更新の合図)
1 素材を集める時間が戻っていないか 準備工数の内訳注記 収集時間が注記に出ない 「素材を探す」が復活
2 書き直しが半分を超えた行はないか 1件あたり作成時間(提案数の注記) 26分前後を維持 作成時間が上振れ
3 準備の質が商談に入っているか 運用表「聞けた」列 月4回以上 月1回以下
4 停滞工程はどれか 差の実測列 パターンA(±30%)以内 パターンC(30%未満)
5 顧客の1文は人間が書いたか 手を残す2か所の記録欄 毎回自書で記録あり 記録が途切れた週

問1と問2が任せる3条件の「①入力が手元にある」「②出力の正誤がすぐ分かる」に対応します。問3から問5が「③間違いのダメージが軽い」の見直しと、手を残す2か所の生存確認です。数字はすべて、総点検(導入1か月目の総点検)と月次報告で既に集めたものを使います。点検のために新しい集計を作らないのが設計の前提です。

任せる3条件ごとの読み直し — 表の行を書き換える3値

5問で赤が出た行は、任せ表の「任せ方」列だけを書き換えます。列の3値は次のとおりです。

  • 維持 — 赤が出ていない。数字が緑のままなら線は動かさない
  • 格上げ — 実測が見込みを超え、品質が保てている。部品→全文へ
  • 格下げ — 書き直しが支配的、または停滞が直らない。全文→部品へ

書き換えの規律を2つ付けておきます。まず1か月に書き換えてよいのは最大2行まで。3行以上書き換わる月は、増しが入った直後の過渡期か、表の設計そのものの見直しであって、毎月の点検の守備範囲ではありません。次に書き換えるとき、根拠の数字を表の横に1行で残す(例: 「商談メモ整形: 部品→全文。作成時間34分→23分、書き直し行0)。

プロンプト本体 — 点検を1発で出す

商談メモの5箱と同じく(守った余白を商談の質に変えるで扱った方式)、AIに渡すのは表の数字と注記だけです。4週分のログを貼って「傾向を要約して」と頼むと推測混じりの文が返るので、渡す物と答える範囲を固定します。

次の2つの表は、営業自動化の任せ表と今月の実測です。この2つの表についてのみ回答してください:

入力1: 任せ表(工程 | ①入力 | ②照合 | ③ダメージ | 任せ方 | 根拠の数字)
入力2: 月次3指標(準備工数の注記 / 商談数「聞けた」列 / 提案数と1件あたり作成時間の注記)

1. 各工程を点検5問(素材消失/書き直し/聞けた回数/停滞/手を残す欄)で判定し、緑か赤かを返す
2. 赤の工程だけ、更新候補を「現状の任せ方 → 提案する任せ方」で出す(最大2行)
3. 根拠は表に書いてある数字の引用のみ。表にない数字・根拠が必要な提案は出さない
4. 更新対象がなければ「今月は維持」と1行で返す

出力はこう返ります。

1. 点検結果:
   - 商談メモ整形: 緑(作成時間23分・書き直し行0)
   - 提案書構成案: 赤(作成時間26分→38分、書き直し2行/3行)
   - フォローメール下書き: 緑(「聞けた」月5回)
   - リスト鮮度の週次運用: 緑(収集時間の注記なし)
   - 顧客への1文: 緑(自書記録4/4週)
2. 更新候補(1行のみ):
   - 提案書構成案: 部品 → 部品(維持)。表外の理由が必要になるため
3. ――「書き直し2行/3行」のうち、直した行は構成案の箱指定ミス。箱の文言更新を来月の提案として記録

今月の維持・更新: **維持(表の変更0行)**

3番の出力をよく見てください。AIは点検の赤を拾いましたが、更新(部品→手など)の提案には表外の根拠が要るので出さず、箱の文言更新という「判断線の外側の提案」に回しました。これが望む返りです。任せ表の行を書き換える判断は人の持ち物であって、AIには点検の数え役を任せます。

次の点検結果のうち「更新候補」から、あなたが採用する行だけを選びます:

1. 採用する行に1行ずつ、根拠の数字を引用して理由を書く
2. 不採用の行に、次の月まで様子を見る条件を1行書く(例: 作成時間が40分を超えたら再点検)
3. 採用した行は任せ表の「任せ方」列と「根拠の数字」列にだけ記入する

ここまでで点検は終わりです。AIの役割は判定の下書きと数え役まで、採用と表への記入は人間。1か月に最大2行という規律の中で、書き換えの責任が残ります。

検算 — 総点検と合わせて月25分に固定

数字は総点検と月次報告の作成時に揃っているので、点検そのものの工数は次のとおりです。

  • プロンプト実行と読み: 3分
  • 5問の結果を上長報告の「今月の変更」候補と突き合わせる読み: 5分
  • 採用した行の表書き換え: 2分

合計10分。総点検15分と同じ週に回すと、導入の月次保守は25分に収まります。更新が発火しない月は10分だけです。手書きで5問を工程ごとに調べ回ると40分前後かかるので、月1回でも30分の削減になります。新しい支出はありません。

まとめ

  • 任せ表は導入時に引いたきりで失効する。ずれの3型は名ばかり化・新工程の未掲載・手を残す場の侵食
  • 点検は月次報告の既存の数字と並べる5問で済む。新しい集計は作らない
  • 更新は「維持・格上げ・格下げ」の3値。1か月2行まで・根拠の数字を横に残す
  • AIは点検の数え役まで。表の行の書き換えは人が採用してから

次回

判断線の点検が回るようになったので、次は残った手作業を数えて、完全自動化に足を踏み入れる判断線の回です。点検を回す人間の工程(素材を貼る・表を書き換える・報告を整える)のうち、月1万円以内の道具で繋げる部分と、手を残すべき部分を分けます。この連載の続きは、はてなブログでも毎日書いています。

この記事の元になった書籍では、任せる範囲の点検を「1か月ごとの更新作業」として扱っています。

書籍の詳細と読者特典はこちらのサイトにまとめています。

🎁 読者特典3点セット(無料)
- ① 提案書3層プロンプト — 40分で6枚の提案書を出す、貼って動く完全版
- ② 調査カード3分プロンプト — 1社30分の企業調査を3分に(5社まとめ処理つき)
- ③ 商談前メモ5箱テンプレート — 商談5分前に読める1枚(AI整形プロンプト+記入例つき)

メールアドレスだけの登録で3点すべてすぐ受け取れます(解除はいつでも)。
→ 読者特典3点セットを受け取る(無料)

📗 見込み客をAIに探させろ — 売れる会社の作り方を、リストと兆候で毎週生み出す(Kindle・読み放題対象)

📗 シリーズ全3冊: 営業の仕事をAIに任せろ ・ 見込み客をAIに探させろ ・ 商談をAIに鍛えさせろ

📚 この連載の他の媒体: note(物語編) ・ はてなブログ(実務編・毎日更新)

営業×AI実践シリーズ 全3作

Kindle Unlimited 読み放題対象 — 追加料金なしで読めます

← 記事一覧へ

← 電車でAIを動かすようになって、商談に着く頃には…断られたら黙っている、が20年の癖だった話… →