止めた行は消さずに降格させる — AI案に確認1行を足す行き先の決め方
商談前メモ5箱の運用を2か月回すと、読み替え表には「2か月消えない癖」の行が残ります。前回の読み替え表は月に1行足して保守するでは、残数差の記録から再読み替えを止める判断を保守行1行にまとめました。止めると判断した行は、読み替え表から消すのではなく降格させます。その箱の「AIの案」をそのまま使う運用から、「AIの案+人の確認1行」を足した運用へ、一段だけ権限を下げる設計です。
今回は、止めた行の4つの行き先、降格した箱を置く降格表の仕様、降格が他の箱に影響しない順番と、降格後の商談メモ1枚の読み方を扱います。
1. 止めた行の4つの行き先(行は消さない)
「再読み替えを止める」は、10/19記事の保守行の3分岐(継続・止める・設計見直し)から出てくる判断です。止めると決まった行に、先に決めるのは行の行き先です。置き場所は4種類に絞ります。
- 降格・確認1行付け(既定の行き先): AIの案は出させるが、採用の条件に人の確認1行を付ける。▲印の箱になる
- 降格・人書きへ: AIの案が商談ごとに外れすぎる箱。箱の問いは残して、入力は手書き欄に戻す
- 保留(2か月): どちらにするか決め切れない箱。▲も付けず、月次の残数差の動きだけを2か月見る
- 復帰(読み替えの再開): 止めた判断の取り消し。保守行の判断を「継続」へ戻し、読み替え表の行だけを更新する
行を消すという行き先がここにないのが位置づけです。消すと、その癖が「いつ・どこの箱で・どんな書き替えで消えたか」の記録が残らず、降格した箱が翌月に戻せるかどうかの比較材料が失われます。降格は「困った箱を下げて、記録と一緒に置く」のが本体です。
2. 降格表の仕様(4列固定)
降格した箱は、読み替え表とは別の小さな表に置きます。降格表の列は4つで固定です。
| 箱名 | 降格形 | 確認の問い1行 | 戻る基準 |
|---|---|---|---|
| 引き金箱 | 確認1行 | 確約の言い方が熱すぎないか | 残数差ゼロが2か月 |
- 箱名: 商談前メモ5箱の名前そのまま(現状・懸念・提案の芯・聞きにくい1つ・引き金)
- 降格形: 「確認1行」か「人書き」の2値
- 確認の問い1行: 書き替え前の問いに代わって、人間が採用前に確かめる1行。中身は商談の確認3点(数字・固有名詞・確約の言い方)のどれか1点から選ぶ
- 戻る基準: ▲確認1行が2か月連続で「修正ゼロ」になった箱が、AI案への昇格候補になる線
過熱しないための上限が2つあります。まず確認の問いは箱ごと1点まで(確認3点を全部付けると手作業が元に戻り、降格の意味が消える)。次に降格の件数は1か月2箱まで(後述)。
3. 降格の順番(読む順番の最後尾から)
5箱には参照線があります。現状箱の値が懸念箱と提案の芯の下地になり、引き金箱が提案の芯を参照して作られる。降格すると降格された箱の値が「▲確認つき」の状態になり、それを参照する箱は▲確認済みの値だけを使うという新しい扱いが発生します。
降格の順番は、商談メモの読む順番の最後尾から降格するのがルールです。読む順番は現状→懸念→提案の芯→聞きにくい1つ→引き金なので、降格は引き金→聞きにくい1つ→提案の芯→懸念→現状の逆順に回します。
理由は参照線の方向です。最後尾(上流から遠い箱)を先に降格しても、参照が1方向のまま下流の値に▲が付くだけで、上流箱の読み替え表の文言はそのまま使えます。逆に現状箱(参照される箱)を先に降格すると、下流2箱が「確認待ちの入力」を参照する形になり、読み替え表の問いの文言も同時に直すことになる。変化を降格表の中に閉じ込めるための順番です。
速度制限がもう1つあります。1か月に降格する箱は2箱まで。商談メモ1枚の読み方は月単位で安定するのが狙いなのに、▲が1か月に4箱も5箱も増えると、運用側の読み方が崩れて降格の効果が測れなくなります。3箱目にしたくなった月は、降格ではなく保留(2か月)を1か月だけ使います。
4. プロンプト本体(降格表を渡して1枚を出させる)
商談前メモの整形は商談5分前メモ5箱の工程のままです。降格が入ると、AIが出した値のうち降格された箱だけに確認の問い1行を付けて、採用前の状態で出させる必要があります。これは出力側の検証で固められます。降格表をスクリプトに渡し、▲の数と降格表の行数が一致しなければ出し直させます。
# kakou_check.py — 出力1枚に確認1行が降格表と一致して付いているかを検証する
KAKOU = [
("引き金箱", "確約の言い方が熱すぎないか"),
("現状箱", "数字が当月の最新か"),
]
LIMIT = 2 # 1か月の降格上限(箱)
memo = {
"現状箱": "月次請求は手動入力で月12件(当月実績)",
"懸念箱": "請求の入力は経理担当の空き時間に集中している",
"提案の芯箱": "請求入力を月初3営業日に半自動化する",
"聞きにくい1つ箱": "経理の担当名をこの場で伺う",
"引き金箱": "来月中旬までに月次請求の担当を1名に集中する、と冒頭で約束する",
}
def check(memo, kakou):
if len(kakou) > LIMIT:
raise ValueError(f"降格は1か月{LIMIT}箱まで(現在{len(kakou)}箱)")
kakou_d = dict(kakou)
lines = []
for box, question in kakou: # 読む順番のまま出す
lines.append(f"{box}: {memo[box]}")
lines.append(f" ▲確認: {question}(採用前に1行だけ書き直す)")
for box in memo: # 上の箱が降格に含まれていなければ通常出力
if box not in kakou_d:
lines.append(f"{box}: {memo[box]}")
return "\n".join(lines)
print(check(memo, KAKOU))
生成AI側へこの検証を渡すときは、降格表の3列目(確認の問い1行)だけをプロンプトに含めます。箱ごとに「▲確認を1行付けること」と「問いを書き替えずそのまま使うこと」を指定します。問いをAIに書き替えさせると、降格した箱の品質が月ごとにずれて戻る基準が測れなくなります。
5. サンプル(入力と出力)
上のスクリプトを実行した出力です。
現状箱: 月次請求は手動入力で月12件(当月実績)
▲確認: 数字が当月の最新か(採用前に1行だけ書き直す)
懸念箱: 請求の入力は経理担当の空き時間に集中している
提案の芯箱: 請求入力を月初3営業日に半自動化する
聞きにくい1つ箱: 経理の担当名をこの場で伺う
引き金箱: 来月中旬までに月次請求の担当を1名に集中する、と冒頭で約束する
▲確認: 確約の言い方が熱すぎないか(採用前に1行だけ書き直す)
読み方は1本に固定です。商談メモを上から読んで、▲の行に差し掛かったら商談直前の待ち時間で1行だけ書き直す。書き直した1行が採用されたら、▲の行は通常の行に戻ります。書き直しが不要だった箱は「確認1行: 修正なし」とメモに残します。この1行が、降格表の「戻る基準(残数差ゼロが2か月)」を数える元帳です。
6. 検算(降格が他の箱に漏れていないか)
降格運用が漏れていないかは、月に1回、3行で数えます。
- ▲の数 = 降格表の行数: 出力1枚の▲確認と降格表の行が一致しない月は、降格表の更新が商談メモに届いていない
- 降格表の行数 ≤ 2(月): 3箱目を出したくなった月は、新しい箱を降格させず保留に置く
- 無所属の行 = 0: 読み替え表の保守行で「止める」と判断した行は、降格・保留・復帰のどこかに必ず到達している。止めたのに降格表にも保留にも現れない行は、保守行の判断が書き換わっている
3行が揃わない月は、降格表の列の語彙が読み替え表とずれていないかを点検します。列のうち「戻る基準」だけは降格表固有の語(残数差ゼロの継続月数)なので、読み替え表の「残数差」と表記を分けたままにします。同じ語にすると、読み替えの効果測定と降格の確認基準が混ざって両方測れなくなります。
7. 所要時間
降格運用の追加コストは、月10分程度です。内訳は、降格表の1行作成が3分/箱(確認の問いを1点選ぶのが仕事のほぼ全部)、出力の▲行の確認が1行あたり20〜30秒(2箱なら1分)、月次の検算が2分、残りが▲行の修正ゼロを降格表の「戻る基準」欄に写し込む1分です。比較として、週点検が10分、保守行が月5分、商談直後の5問が3分。降格運用は保守の2倍で、商談メモの読み方を崩さずに箱の権限を段階的に動かせる工程です。
まとめ
- 止めた行は消さない。行き先は降格・確認1行付け/降格・人書き/保留2か月/復帰の4種に置く
- 降格表は4列固定。確認の問いは確認3点から箱ごと1点を選び、月2箱まで降格させる
- 降格の順番は読む順番の最後尾から。参照される箱(現状箱)は最後まで降格しない
- 出力1枚の▲確認の数と降格表の行数の一致を月次で数える。▲行の「修正なし」が戻る基準の元帳になる
次回
降格した箱は、確認の1行が積み重なればAI案に戻せます。次回は、昇格の条件と戻し方です。確認1行が2か月連続で修正ゼロだった箱をAI案に戻すときの2段の戻し(まず確認を「1行採用」の形へ格上げし、その後でAI案へ)と、昇格の月に読み替え表・降格表のそれぞれの行をどう並び替えるかを扱います。はてなブログ(実務編・毎日更新)では運用の細かい手を毎日書いています。
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