速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

商談の振り返りをAIに聞かせる — 5問を1枚にして翌商談の準備へ戻す型

初出: Zenn

前回は導入1か月を4つの時期で読み戻し、書籍3冊の分担を1枚に並べました(導入1か月を振り返る — 任せろ・探させろ・鍛えさせろを1本の線で回した記録)。道具の線が締まったので、次の周期「運用と点検」に入ります。最初のテーマは、粒度を1か月から商談ごとに下げた振り返りです。

この記事で作るのは2つです。

  1. 商談が終わった直後にAIへ聞かせる振り返り5問(1枚・答えは1行固定)
  2. 答えを翌商談の商談前メモ(5箱)へ戻す戻しの3行

商談の振り返りが消える3つの理由

  • 宿題化する: 「後でまとめて書く」と決めたものは書かれない。商談の翌朝には次の予定が始まっている
  • 口頭で消化する: 同僚との雑談で「なんとなく分かった」になり、紙に記録が残らない
  • 答えの持ち場がない: 仮に5行書いても、読み返す場面が定義されていない。翌商談の準備は、またゼロから履歴を読むところへ戻る

3つ目が一番の損です。書かないなら損は「消える」だけで済みますが、書いたものが次に戻らないと、書く労力も振り返った時間もそのまま捨てます。

解決は「書かせる」から「聞かせる」へ

自由文の日報は、やる気が続かないと同時に、答えの粒度も翌商談に使いにくい形で出ます。方向を「AIが聞く」側へ倒します。

  • 商談が終わった直後(15分以内)にAIへ質問させ、1問ずつ答える
  • 答えは1行。相手の発言と本日に起きた事実のみ。推測と一般論は書き直しを求める
  • 全問が終わったら質問を打ち切り、AIは最後に翌商談の5箱へ戻す3行だけを出す

聞く側の負担は「商談の記憶が新しい10分」で消費します。後から空白を埋める推測の工程が、そもそも発生しない構造です。

振り返り5問の1枚 — プロンプト本体

あなたは商談直後の振り返りを聞く相手です。次の質問を1問ずつ出し、
答えを受けたら次の質問へ進みます。

- 質問は1回に1つだけ。続けざまに出さない
- 答えは1行で。相手の発言の引用か、本日に起きた事実のみ。
  推測と一般論は1行での言い直しを求める
- 5問が終わったら質問は打ち切り。最後に「戻しの3行」のみを出力する

5問:
1. 相手が最初に反応した話題は何でしたか
2. 未解決のまま残った懸念は何ですか
3. 提案の芯への反応は、前の商談と比べてどう変わりましたか
4. 「聞きにくい1つ」は今日聞けましたか。聞けなかった場合、いつなら聞けそうですか
5. 相手の言葉で、そのまま残したい一文はありますか

戻しの3行(次の商談前メモ5箱の入力として出力):
- 2番箱(未解決の懸念)へ入れる1行
- 4番箱(聞きにくい1つ)へ入れる1行
- 商談前メモの冒頭に添える前商談の要旨1行

質問4は「聞けなかった」の答えも収めるところを決めているのがポイントです。聞けなかった質問は捨てず、いつなら聞けるかという条件と一緒に4番箱へ戻します。5箱の設計では毎回沈んでいく素材がこの箱に入るだけで、商談前の余白に読み返せる形へ戻ります(商談5分前のメモをAIが5箱に振り分ける)。

サンプル — 商談直後10分の返答

入力(AIの5問への返答・1行ずつ):

1: 「いま10人で回している」に触れた時点で声のトーンが変わった
2: 来期までには人を増やせないという条件が未解決のまま
3: 前は料金だけ見ていた。今日は運用側の質問が増えた
4: 聞けなかった。人数の話が一段落したあとに移す案で次は聞く
5: 「月12件しか商談が立たない」

出力(戻しの3行・5箱2行までの制約内):

- 2番箱: 増員できない制約の中で12件の壁を崩す前提に変わった(前: 料金中心)
- 4番箱: 人数の話が止まった直後に移す。持ち越しの2回目以降は提案の芯から入る
- 冒頭1行: 前商談の終わり=増員不能・12件の壁・運用側の質問が増えた

戻しの3行は読む側の5分を壊さない量に絞ります。各箱2行までの制約に3行が全部収まるのは、答えが1行固定だからです。ここで自由文が混じると、商談前メモの出発点に「読み切れない塊」が入って5分の設計が崩れます。

検算 — 実施率と持ち場のつじつま

  • 従来型(気が向いたときに書く日報): 商談3本/週に対し実施は0〜1本。翌商談の準備に使えた行は実質0
  • 5問型: 商談直後に聞くため、実施率は商談数と一致。5行固定
  • 所要: 商談1本あたり13分(答える10分+戻し3行の確認3分)。商談3本/週なら週40分弱
  • 戻る側の減り: 翌商談の準備が「5分で読む」に収まる前提(商談前15分→5分は実測どおり)に、前商談の未解決が最初から2番箱に入るため、メールの履歴を遡って探す往復が消える
  • フォローメールとの接続: 5問の答え5が5番箱「引き金」の素材。24時間以内の1通はこの1行の転記から始まる(商談後24時間のフォローメールは「引き金」から書く)

振り返りの答えを記録で終わらせない、が設計の芯です。5行のうち3行は次の商談前メモに、1行はフォローメールに、残る1行は次回の点検の入力になる持ち場を持っています。

まとめ

  • 商談の振り返りは「書いて残す」でなく「聞かせて取る」へ。5問・答えは1行固定
  • 翌商談へ戻すのは3行のみ。持ち場(2番箱・4番箱・冒頭の要旨)まで定義する
  • 5番箱「引き金」の素材も5問の中から出る。フォローメールへの接続が1行に収まる
  • 答えの持ち場を決めるまでがこの型。持ち場がない振り返りは消える

次回

商談ごとの振り返りの入る形が決まったので、次の周期は「答えの点検」です。5問の答えを1週間ぶん並べて読み返し、繰り返して出てくる1つの癖だけを1行で潰す型(3作目・鍛える章・点検側)を扱います。はてなブログ(実務編・毎日更新)では運用の細かい手を毎日書いています。

この記事の元になった書籍では、商談後の振り返りを「聞く形」に落とす設計を、質問の選び方と答えの持ち場まで含めて紹介しています。

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📚 この連載の他の媒体: note(物語編) ・ はてなブログ(実務編・毎日更新)

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