速水拓真 営業×AI 実践シリーズ
Zenn

読み替え表は月に1行足して保守する — 書き替え前後の残数差を読む判断の型

初出: Zenn

前日は「2か月消えない癖は商談の型側で書き替える — 持ち場の行を読み替え表に差し替える運用の型」を書きました。点検の経路で消えない癖を、商談前メモの型(問い)の側に移し替える読み替え表を作りました。この記事ではその先を扱います。読み替え表を置いたままにすると、効いた書き替えと効いていない書き替えが区別できなくなるので、月に1行だけ足す保守の型です。

1. 保守行の位置づけ(表の末尾に1行)

読み替え表の行は「書き替え前の行・差し替える箱・元の問い・書き替え後の問い」の4列で固定でした。保守は行を増やすのではなく、表の末尾に判断行を1行足すだけです。行の増減はしないので、読み替え表は何か月回しても1表のままです。

保守行が担うのは2つの仕事です。1つは書き替え前後の残数差の記録。もう1つは、残数差が読めないときに再読み替えを止める判断の記録です。月次運用表の「残った癖」の列と読み替え表を見比べるだけで埋まるので、点検の10分・月次の2列の次に、保守は5分の階層として置きます。

2. 保守行の4列(月・読み替え数・残数差・判断)

列 入れるもの 例
月 保守の対象月 10月
読み替え数 当月に書き替えた行の数 2
残数差 同じ癖が翌月の「残った癖」から消えた場合1 / 残る場合0 1
判断 継続 / 止める / 出し直し 継続

決まりは3つです。

  • 残数差は読み替え表の行ごとに見る。表の行単位で効きを比べるので、月単位の合計でごまかさない
  • 同じ行で残数差が2か月続けて0なら、次の保守行の判断は「止める」。商談の型の側からは直せない癖として扱う
  • 判断が「止める」になった行は、読み替え表から削除しない。元の問いへ戻さず、持ち場替えの対象として印だけ変える(翌日の処置は削除でなく降格)

3. 残数差を計算して判断ラベルを出すスクリプト

読み替え表(yomikaehyo.csv)と月次運用表(tsukiyo.csv)を渡すと、行ごとの残数差と保守行を出すPythonです。

import csv

# 読み替え表: 書き替え前の行,差し替える箱,元の問い,書き替え後の問い
# 月次運用表: 月,潰した癖の数,残った癖,翌月初期値
hyo = list(csv.DictReader(open("yomikaehyo.csv", encoding="utf-8")))
mon = list(csv.DictReader(open("tsukiyo.csv", encoding="utf-8")))

def resid(month):
    return set(x.strip() for x in mon[month]["残った癖"].split(";") if x.strip())

labels = []
for r in hyo:
    habit = r["書き替え前の行"]
    months = [mon[i]["月"] for i in range(1, len(mon))]
    gap = []
    for m in months:
        # 書き替え実施月の翌月に同じ癖が残ったか(1=消えた, 0=残った)
        gap.append(0 if habit in resid(m) else 1)
    if len(gap) >= 2 and gap[-1] == 0 and gap[-2] == 0:
        label = "止める"
    elif gap and gap[-1] == 1:
        label = "継続"
    else:
        label = "観察"
    labels.append({"行": habit, "残数差": gap[-1] if gap else None, "判断": label})

print(*labels, sep="\n")

出力の1行が読み替え表の保守行の材料です。判断はスクリプトがラベルを出し、「止める」の最終判断は人が押します(商談に立つ人が書けたか書けなかったかを知っているのは本人だけです)。

4. 「止める」の3分岐(再読み替えを止めたあと)

残数差が読めなくなった行の行き先は3択に決めます。

  • 継続: 残数差1が出た月の翌月も同じ問いのまま維持。効果が出るまで元の問いには戻さない
  • 止める(格下げ): 残数差0が2行連続。この癖は型の書き替えでは直りません。AIの持ち場から人の持ち場へ降格させ、商談前メモの該当箱では「AI案→人の確認1行」の形に変えます
  • 出し直し: 読み替え数が1か月3行を超えたら、行単位の書き替えをやめて5箱の設計の見直しへ(箱をまたぐ癖は箱の分割・統合でしか直りません)

降格後の箱は、読み替え表の行から消さずに「降格済み」の印を残します。商談メモの1枚が増えず、月次の初期値にも影響しないのが設計の意図です。

5. サンプル(入力と出力)

月次運用表が次の2か月分だったとします。

月,潰した癖の数,残った癖,翌月初期値
9月,2,値段の話を最後まで出せない,-
10月,3,値段の話を最後まで出せない;まとめを相手の言葉で返す,-

読み替え表の該当行「値段の話を最後まで出せない」が9月に書き替え済みだった場合、出力は次です。

{'行': '値段の話を最後まで出せない', '残数差': 0, '判断': '止める'}

書き替えから1か月経ち、10月も同じ癖が残ったためのラベルです。この行は翌月、箱を「AI案→人の確認1行」に降格させる処置を1行で書き加えれば、保守は完了します。

6. 検算(保守行と月次の行が矛盾しないか)

保守行の残数差は、月次運用表の行と符号が揃うことで検算します。条件は2つです。

  • 残数差1の行(効いた書き替え)は、翌月の月次行の「残った癖」に載らないこと(載ったままなら書き替えの問いが商談でまだ書ける形になっていない)
  • 保守行の判断「継続」の行数は、月次行の「潰した癖の数」と逆方向に動くこと(書き替えが効くほど点検で潰す癖が減り、残数差1が増える)

2つが揃わない月は、読み替え表の行と月次の行のどちらかの書き方が崩れています。列の語彙を点検(点検の1行と同じ粒度に戻す)してから、次の保守に入ります。

7. 所要時間

保守は月1回、スクリプト実行と記入込みで5分です。判断の最終確認を含めても10分には届きません。比較として、週点検が10分、商談直後の5問が3分、月次の行が2列の写し込みだったのに対し、保守は月次の直後に1行足すだけの最軽量階層として回ります。

まとめ

  • 読み替え表の保守は表の末尾に1行(月・読み替え数・残数差・判断)。行を足さないので表は1表のまま
  • 残数差が2行連続0なら再読み替えを止め、持ち場替え(任せ方の格下げ)へ。読み替え数が月3行超なら5箱の設計の出し直しへ
  • 効いた書き替えは月次の「残った癖」から消え、初期値や降格済みの印として読み替え表に残る。人間の判断は最後の1か所だけ

次回

止めた癖は、読み替え表の行から消すのではなく降格させます。次回は、降格の行き先の決め方です。該当箱の「AIの案」を「AI案→人の確認1行」の形へ降格させるとき、降格した箱が他の箱に影響しないようにする順番と、降格後の商談メモ1枚の読み方を扱います。はてなブログ(実務編・毎日更新)では運用の細かい手を毎日書いています。

この連載の元になった書籍では、任せ方の格下げを道具の順番として扱う設計を、降格の確認まで含めて紹介しています。

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